Corynebacterium ulcerans による咽頭ジフテリア−オランダ

(Vol.23 p 68-69)

3日間咽頭痛と嚥下困難を持続していた59歳の女性が入院した。検査の結果、 発熱はなく、 軟口蓋および口蓋垂が腫脹し、 膜性の滲出物が軟口蓋および鼻咽腔上に見られた。この滲出物の内視鏡的な除去時には出血は見られず、 頚部のリンパ節腫脹および軟部組織腫脹はみられなかった。患者にはここ最近の海外渡航歴はなく、 海外渡航者との接触歴もなかった。また、 彼女自身ジフテリアに対するワクチン接種歴はなかった。

ジフテリアは鑑別診断に含まれているため、 患者は厳しく隔離して看護され、 ペニシリンの経静脈投与による治療を受けた。4日以内に患者は全快した。咽頭ぬぐい液の培養からCorynebacterium ulcerans が分離された。さらに、 PCRにより分離株からジフテリア毒素遺伝子が検出され、 Elek試験により毒素の産生が確認された。

C. ulcerans の人−人感染は稀であるが、 接触者調査が行われた。しかし、 患者と家庭内で接触した2名の咽頭ぬぐい液からは、 いずれもC. ulcerans は分離されなかった。家で飼っているネコを除いて、 患者は最近ウマやウシ、 他の動物と接触したことはなく、 未殺菌の牛乳を飲んだこともなかった。感染源は不明である。

オランダにおいて最近発生したジフテリアの報告は、 1991年のC. diphtheriae によるものである。今回の症例から、 C. diphtheriae 以外のCorynebacterium 属菌が咽頭ジフテリアの臨床像を引き起こしうることが明らかとなった。それゆえ、 疑わしい症例における実験室室検査では、 ジフテリア毒素を産生するすべてのCorynebacterium 属菌を分離標的とするべきである。

(Eurosurveillance Weekly、 No.7、 2002)

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