2001年6月15〜28日、 ビクトリア州で同地区に居住する4例のSalmonella Typhimuriumファージ型(PT)99感染者の届け出が州当局になされた。この地区ではその年の初めに、 働いていた飼育場でS . Typhimurium PT99に感染して死んだ羊6頭を埋めた後、 同菌に感染した1例が報告されていた。S . Typhimurium PT99は2000年に全国で16例、 ビクトリア州でも年間数例程度のかなり稀な血清型である。
州当局の調査で、 4例中の1例が発症3日前に地元ホテルのビュフェで喫食し、 さらに同じ6月6日夕、 同ホテルのビュッフェで食事をした多数が胃腸炎症状を呈していたことが分かった。小羊肉料理が原因と疑われたため、 6日夜にホテルのビュッフェで喫食した客のうち予約客78名にインタビューした。初発の1例に加えて18名の疑い症例が明らかになった。発症率は24%で、 下痢(100%)、 嘔気(79%)、 嗜眠(63%)、 嘔吐(21%)などがみられた。過半数(53%)が通院し、 2名(10%)が入院した。潜伏期間の中央値25時間(16〜68時間)、 患者年齢の中央値45歳(7〜72歳)、 男性58%であった。ホテルスタッフに有症者はいなかった。調査対象となった飲食物31品のうち、 小羊肉の料理(グレービーソースにベーコンと玉ねぎ添え)が疾病と強い関連があった。
ホテルの調査により、 設備、 調理温度記録等に不備があり、 小羊肉料理もその中に含まれていた。食肉の流通も調査され、 年初めの感染者が働いていた飼育場からも購入されていたが、 時期は不明で今回の集団発生との関連は確定できない。小羊肉料理は残品が無かったため調査できず、 他の小羊肉、 関連食品、 関連業者などについて詳細な細菌学的検査をしたが陰性であった。
小羊肉の汚染については判明しなかったが、 適切な取扱い、 衛生概念等の教育がなされた。
(Australia CDI、 25、 No.4、 277-278、 2001)