事業所給食によるノーウォーク様ウイルス食中毒事例−大阪市

(Vol.23 p 64-65)

大阪市内で発生した集団食中毒事例において、 患者糞便・調理従事者糞便および事業所給食(保存食)からノーウォーク様ウイルス(NLV)が検出されたので報告する。2001年12月6日大阪市内の事業所で、 嘔気・下痢・腹痛を主訴とする患者が多発していることを探知し、 大阪市保健所で聞き取り調査したところ、 社員107名中患者は50名であり、 12月3日〜6日の事業所給食を原因とする集団食中毒が疑われたので、 食中毒原因物質の検索を実施した。

材料と方法:12月7日〜10日に採取された患者糞便30検体、 調理従事者糞便3検体および12月3日〜6日の保存食4検体についてNLVの検査、 同時に食中毒細菌検査を実施した。NLV検査はRT-PCRとリアルタイムPCRを用いて行った(生活安全総合研究事業:食品中の微生物汚染状況の把握と安全性の評価に関する研究)。RT-PCRは、 SR33/48・50・52およびSR33/46を用いて増幅し、 プローブハイブリダイゼーションにより型別を行った(検食についてはSR33/NV82・SM82で1st PCR後nested PCRを行った)。リアルタイムPCRは影山らの方法(Vita, 18, 2001)に従い、 TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI社)、 COG1F/R、 RING1-TP(a)/(b) およびCOG2F/R、 RING2-TPを用いて、 ABI 7700(ABI社)でリアルタイムPCRを行った。

結果:リアルタイムPCRにより患者糞便22検体(73%)、 調理従事者糞便1検体(33%)および12月5日の保存食(豚肉の生姜焼き、 ポテトサラダ、 ひじきの煮付け、 みそ汁、 御飯等)から20〜50 copy/gのNLV genogroup II(GII)が検出されたが、 保存食は1日分が一袋にまとめられていたため、 原因となった食材の特定はできなかった。RT-PCRでは患者糞便6検体(20%)および調理従事者糞便1検体(33%)からNLV GII(P2B)が検出されたが、 いずれの保存食からもNLVを検出できなかった。細菌検査では特定の食中毒菌は検出されなかった。

まとめ:本事例は12月3日〜6日の事業所給食を原因とするNLVによる食中毒事例で、 喫食者80名のうち50名が発症し(発症率63%)、 嘔吐(61%)、 下痢(56%)、 腹痛(44%)が主な症状であった。患者発生状況は12月6日午後〜7日午前に患者40名(80%)が集中しており、 単一暴露による感染と考えられたが、 患者らの喫食状況からはいずれの食品が原因であるか特定するに至らなかった。

リアルタイムPCRを用いたNLV検出法は、 通常、 RT-PCRに比べ感度・特異性・迅速性に優れており、 またnested PCRよりコンタミネーションの危険性も低く、 NLVによる食中毒や感染症における行政検査に有用であると考えられる。

大阪市立環境科学研究所
勢戸祥介 入谷展弘 久保英幸 阿部仁一郎 村上 司 春木孝祐

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