日本におけるHIV-1サブタイプ

(Vol.23 p 111-112)

日本で流行しているHIV-1の特徴を明らかにするため、 2002年3月末までに神奈川県衛生研究所に依頼のあったHIV感染者534例についてHIV-1のサブタイプを解析した。

サブタイプの解析はHIV-1のenvC2V3 領域をPCR法で増幅し塩基配列を決定後、 neighbor-joining法による系統樹解析により行った。男性同性間性的接触による感染者の一部と東南アジア出身の感染者の一部については、 PCR法によるサブタイプBとAE(E)の簡易鑑別法およびenvV3 領域のペプチドを用いたELISA法を行った。

男性同性間性的接触による感染では96例中94例がサブタイプB(98%)であったが、 サブタイプEとAも1例ずつ検出された(図1)。

一方、 異性間性的接触による感染では、 216例中サブタイプEが144例と最も多く、 ついでサブタイプBが44例、 A11例、 C9例、 D3例、 G2例、 F3例であった。また、 これら216例の国籍は日本国籍100例、 外国国籍116例で、 その内訳は東南アジア出身が95例、 アフリカ12例、 南米6例、 その他3例であった。東南アジア出身の感染者ではサブタイプEが91例(96%)、 サブタイプBが4例(4.2%)であったが、 アフリカや南米出身の感染者からはサブタイプB、 Eの他にサブタイプA、 C、 FやA/Cリコンビナントが検出された(図1)。

また、 異性間性的接触による日本人感染者ではサブタイプEが51例(51%)と最も多く、 ついでサブタイプBが34例(34%)、 その他少数ではあるがサブタイプA6例、 C4例、 D3例、 G2例が検出された。

異性間性的接触による日本人感染者についてHIV感染が判明した年とHIV-1サブタイプとの関連について解析した結果、 男女とも1993年まではサブタイプBが主流であったが、 1994年以降サブタイプEが増加していることがわかった。また、 女性では1994年以降サブタイプEの他にサブタイプA、 C等の増加も認められ、 日本人女性感染者で、 サブタイプが多様化していることが確認された(図2)。

2001年にHIV陽性が確認された献血血液79例中47例についてHIV-1サブタイプの解析を行った。その結果、 サブタイプBが41例(87%)、 次いでサブタイプE5例(11%)、 サブタイプA1例(2.1%)であった。2000年までのHIV陽性の献血血液175例の解析においてもサブタイプBが80%以上を占めており、 2001年の結果は従来とほぼ同様の傾向であった(図1)。

神奈川県衛生研究所ウイルス部 近藤真規子 今井光信
(厚生労働省HIV検査法・検査体制研究班)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る