福岡市内の社会福祉施設においてノーウォーク様ウイルス(NLV)感染の集団発生があり、 さらに有症者入院先の病院においても、 NLV集団感染が発生したので報告する。
2002(平成14)年2月15日〜22日にかけてA社会福祉施設の入所者や職員25名が嘔吐、 腹痛、 下痢などの症状を訴え、 入所者9名が17日〜20日の間にB病院へ入院した。その後、 2月19日〜3月2日にかけてB病院の職員や、 元々入院していた患者30名が同様の症状を訴えた。
このうちA施設の有症者7名と無症者6名、 およびB病院の有症者11名、 計24名の糞便について検査を実施した。
RT-PCRによるNLV遺伝子検出は、 1st; Yuri52F, Yuri52R, MR3, MR4→2nd; Yuri22F, Yuri22Rおよび1st; 35', 36→2nd; NV81, NV82, SM82のプライマーの組み合わせで実施した。
その結果、 A施設分では有症者4名(職員3名、 B病院に入院した患者1名)と無症状の職員3名、 B病院分では有症者7名(職員3名、 入院患者4名)の計14名から、 NLVを検出した。
検出したNLV遺伝子のうち12検体について、 国立公衆衛生院より分与された2000/01年プローブG1P-A, BおよびG2P-A, B, Cの5種類を用いてマイクロプレート・ハイブリダイゼーションを実施したが同定できなかった。
このためダイレクトシークエンスを行い300bpについて解析した結果、 すべて配列が同じであり、 Genogroup IとGenogroup IIの中間に位置することがわかった。
疫学調査の結果、 A施設ならびにB病院の事例については、 いずれも「人→人」感染が判明した。特にB病院の事例については、 A施設からの入院者を契機として発生した院内感染であり、 2週間以上も継続した。
近年、 本市では「人→人」感染と考えられるNLV集団感染事例が増加してきており、 特に社会福祉施設や病院等の集団施設においては、 患者の汚物や吐物の処理・消毒、 職員の手洗い・消毒励行といった基本的な衛生管理を徹底することが重要と考える。
福岡市保健環境研究所
和佐野ちなみ 宮代 守 樋脇 弘 馬場純一
福岡市西区保健福祉センター 竹中 章
福岡市保健福祉局保健予防課 岩永正彦