2001年に広域流行した同一PFGEタイプを示す腸管出血性大腸菌O157について
(Vol.23 p 139-139)

2001年に日本各地の地方衛生研究所等で分離された腸管出血性大腸菌(EHEC)についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子型別を中心とした分離菌株の解析を行った。感染症法に基づく感染症発生動向調査によると、 2001年に発生したEHEC患者4,319名(2002年4月2日現在)のうち、 国立感染症研究所細菌第一部に送付され、 解析を行ったO157株は2,438であった。

Xba Iを中心としたPFGEパターンを比較すると、 2月下旬〜3月中旬にかけて発生したチェーンレストランにおけるサイコロステーキによる集団事例(本月報Vol.22、 No.6Vol.22、 No.7参照)や、 3月中旬〜4月にかけて関東地方を中心として発生した牛タタキ等による集団事例(本月報Vol.22、 No.6参照)において、 それぞれの事例内の分離株のPFGEパターンは原因食材から分離されたものも含めて一致していた。

また、 多種類のPFGEパターンが存在するなかで、 5月以降の分離菌株のうちにPFGEパターンが一致するもの(type A)が528株(約21%)あった。さらに、 type Aと極めてPFGEパターンが類似しておりバンド1本の違いであるtype B、 Cを示す分離株が、 頻度は低いもののtype Aとともに散発および集団事例内で分離される場合があり、 その数はtype Bが56株、 type Cが25株あった。type Aの分離株の一部についてはXba Iの他にBln I、 Spe Iを用いたPFGEの結果でも同一パターンを示し、 このパターンを示す分離株のclonalityを強く示唆する結果であった。また、 type A、 BまたはCを示す株はすべてファージ型(PT) 33であった。

8月下旬には東京都、 埼玉県においてtype AまたはBを示す株により散発、 集団事例が発生し、 疫学調査から「和風キムチ」が原因食品として挙げられ、 実際に患者宅の「和風キムチ」からO157:H7が分離された(本月報Vol.22、 No.11参照)。「和風キムチ」からの分離株はtype Bであった。「和風キムチ」の流通は地域限定的であったが、 type A、 BまたはCを示す株は北海道・東北地方を除いたほぼ全都府県から分離されていた。

このように広域からの分離株が同一遺伝子型を示すことは、 広く流通する食材が共通のO157によって汚染されている可能性を示唆すると考えられるが、 食材からの菌分離は報告されていない。

国立感染症研究所・細菌第一部
寺嶋 淳 泉谷秀昌 伊豫田淳 三戸部治郎 田村和満 渡辺治雄

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