エコーウイルス11型による無菌性髄膜炎の流行−高知県

(Vol.23 p 145-145)

2002年1月下旬、 高知県の感染症発生動向調査検査定点より搬入された無菌性髄膜炎(AM)の検体よりエコーウイルス11型(E11)を1件検出した。その後3月に入ってAMの検体搬入が多くなるとともに、 同型ウイルスが検出されるようになり、 5月初旬現在9症例(11株)から検出されている。月別検出数は1月1例(2株)、 3月2例(3株)、 4月6例(6株)であり、 8症例がAM、 1症例がインフルエンザ様疾患であった。

検査材料別検出状況はAMの検査目的がほとんどであり、 髄液7株、 咽頭ぬぐい液3株、 糞便1株で髄液からの検出が多くなっている。同時検出の症例および検査材料はAM患者の咽頭ぬぐい液と糞便、 髄液と咽頭ぬぐい液の2症例であった。

E11分離時の細胞感受性はRD-18S、 LLC-MK2細胞が良く、 これらの細胞を用いて同定を行った。同定は市販エンテロウイルス混合血清、 単味抗血清および国立感染症研究所より分与のエコープール抗血清(EP95)を用いた。

9症例を年齢別にみると0歳(1例)、 3歳(1例)、 4歳(2例)、 6歳(1例)、 7歳(2例)、 9歳(1例)、 11歳(1例)であり、 今のところ特に低年齢で発症する傾向はない。性別では0歳の1例を除きすべて男児であった。

県下におけるE11の流行は1996年9月〜1997年2月(32例)にかけて確認されているが、 この流行は冬季を中心とした流行であり、 流行の中心となった疾患は呼吸器系由来疾患、 不明発疹性疾患で、 両疾患が75%(24例)を占めており、 AMは3例(9%)であった。同じE11の流行であっても、 冬季の流行と春または夏を中心とした流行ではウイルス検出疾患に差が見られると考えられた。香川県においてもE11の冬季流行と夏季流行を経験しており、 同様の傾向がみられたと報告している(本月報Vol.23、 No.3参照)。

今回の流行は感染症発生動向調査患者定点からの報告および分離状況からみて、 現時点では中央医療圏における流行と推察されるが、 5月に入って中央医療圏以外からもAM患者の検体搬入が増加しており、 県下全域に流行が拡大することも懸念される。今後の動向を監視していきたい。

高知県衛生研究所
千屋誠造 永安聖二 小松照子 山脇忠幸 上岡英和

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