小児の夏の感染症として知られている手足口病であるが、 近年流行が晩秋までずれ込むことをよく経験する。しかし本年は、 春先から患者数が増加するという今までにない流行状況を呈しているので、 その概要を報告する。
A群コクサッキーウイルス16型(CA16)による手足口病の流行は1998年以降みられなかったが、 2001年9月以降患者発生の増加がみられ、 週当たりの患者報告数が0.5人/定点を超える状態が続き、 2002年第1週、 2週は減少したものの第3週以降再び増加し、 4月以降は週の患者報告数が1.0人/定点を超える状態が続いている。地区別では2001年10月と12月をピークに西部で患者の多発が認められ、 終息しないまま2002年になって東中部で患者が多発している(図)。報告された患者の年齢分布は2001年(8月〜12月)と2002年で違いはなく、 1歳32%、 2歳25%、 3歳15%であり、 4歳以下で90%を占めている。これは前回(1998年)の流行から4年が経過して、 その後に出生した乳幼児が感染の中心となったことを裏付けている。
ウイルス分離は2001年8月〜2002年5月までに手足口病患者102検体(水疱10検体、 咽頭ぬぐい液84検体、 便3検体、 眼脂1検体)についてVero、 RD、 FL、 HELの各培養細胞と哺乳マウスを用いて行い、 CA16(48株)、 CA2(1株)、 Adeno 3(1株)、 未同定(3株)のウイルスを分離し、 CA16を原因とする流行であることを確認した(表)。分離ウイルスはVero細胞および哺乳マウスでよく分離された。同定は自家製のCA16分離株抗血清を用いてプラック減少法にて行い、 容易に同定された。
4月以降も県西部で患者が増加していることから、 好発期に向かって今後の動向が注目される。
島根県保健環境科学研究所
飯塚節子 田原研司 糸川浩司 川向明美 板垣朝夫