2002年春における小中学校でのインフルエンザ様疾患の集団発生とウイルス分離状況−熊本県

(Vol.23 p 171-171)

今季の県下のインフルエンザ届出患者数は1月をピークに減少傾向を辿っているが、 4月中旬〜下旬にかけて県中部および東部の小中学校において集団かぜが発生した。今回、 その概要とそれらを含めた感染症発生動向調査における最近のインフルエンザウイルス分離状況を報告する。

に、 県内の2001/02シーズンにおけるインフルエンザの保健所別一定点当たり患者報告数を示した。県内の平均は第5週(1/28〜2/3)をピークとして減少したが、 からわかるように東部地区(A保健所管内)では17〜20週に、 中部地区(B保健所管内)では16〜17週に再流行があった。この時期に迅速診断キットを保有していた病院はほとんどなかったが、 新たに購入してB型と診断した所も少数あった。学年閉鎖は1校で、 別の学校では約半数が欠席したため繰り上げ下校させたクラスもあった。この学校では5〜6年生から低学年に患者が拡がった。

当研究所に行政検査依頼のあった患者児童20名の主症状は、 発熱(38.0〜39.6℃)、 咳、 咽頭痛を伴った上気道炎であった。その他の症状として、 関節痛や気管支炎を呈する者もいた。患者検体はすべて咽頭ぬぐい液で、 ウイルス分離はMDCK細胞を用いて行った。初代でCPEの不明瞭な検体は2代まで継代培養を行った。その結果、 17名の検体からウイルスが分離された。ウイルスの同定は、 国立感染症研究所から分与された2001/02シーズンのフェレット抗血清を用いて、 マイクロプレート法による赤血球凝集抑制(HI)試験( 0.5%ガチョウ赤血球を使用)で行った。

抗血清A/Moscow/13/98(H1N1)、 A/New Caledonia/20/99(H1N1)、 A/Panama/2007/99(H3N2)、 B/Akita(秋田)/27/2001、 B/Johannesburg/5/99(ホモ価、 各640、 160、 640、 160、 320)に対する分離ウイルスのHI価は、 17株すべてがB/Akitaに対して1:20で、 それ以外の抗血清に対しては1:10未満であったことから、 B型インフルエンザウイルスと同定された。また、 検体接種後3日目の培養上清についてインフルエンザ抗原簡易検出キット(インフルA・Bクイック「生研」)の使用を試みた結果、 HI試験同様、 B型インフルエンザウイルス抗原陽性と判定され、 早期に見当をつけることができた。

2001年12月〜2002年5月末までの感染症発生動向調査におけるインフルエンザウイルス分離株の内訳は、 のとおりである。

から明らかなように、 シーズン当初はA/H1型が流行し、 その後A/H3型の占める割合が増加したものの、 3月にはB型が大勢を占め、 4月以降はB型のみ分離されている。このことは全国的な傾向と思われるが、 5月中旬以降の検体からもウイルスが分離され、 下旬にも迅速診断法陽性の検体が搬入されるなど、 例年に比べ終息がゆるやかなので今後の動向に注目したい。

熊本県保健環境科学研究所 田端康二 松尾 繁 西村浩一 甲木和子
熊本県宇城保健所     上村賢吾
熊本県阿蘇保健所     堀内 深
熊本県健康増進課     岡本邦利

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