2001/02シーズンのインフルエンザの流行は、 3月上旬をピークとした主流行がほぼ終息した4月中旬から再び流行がみられ、 流行規模は小さいものの、 5月下旬まで流行が続いた。同時期県内全域で小中学校におけるインフルエンザ様疾患の集団発生も報告された。一方、 病原体定点からのインフルエンザ様患者の検体からは、 B型インフルエンザウイルスの検出が3月から始まって6月現在(24週)まで続いている。このように本県では今シーズンの流行は例年と異なる状況を呈しているので、 その概要について報告する。
1.患者報告数の概要
インフルエンザ患者数の推移をみると、 第1週〜15週まで(以下前期)と第15週以降(以下後期)の二峰性の流行を示していた(図1)。この報告患者を年齢別に6歳〜19歳の群とそれ以外の年齢群に分けると、 前期と後期とでは両群の割合は逆転しており、 後期においては6〜19歳群の割合が多かった(図1)。さらに後期患者数の前期患者数に対する比を年齢群別にみると、 6〜19歳の群で有意に高かった(図2)。
2.インフルエンザウイルス分離検出状況
ウイルス分離はトリプシンを添加した培養液を用いMDCK細胞により実施した。初代培養でCPEの不明瞭な検体については2代目まで培養を実施した。HAおよびHI試験はモルモット赤血球を用いた。B型インフルエンザウイルスは3月上旬から計17株検出された(表1)。このうち3月と4月に分離された4株、 5月に分離された1株および6月に分離された1株(計6株)については国立感染症研究所より分与された2001/02シーズン用フェレット抗血清のいずれに対してもHI価10未満を示し同定が困難であった。その他10株については、 B/Johannesburg/5/99にHI価10〜40、 B/Akita(秋田)/27/2001にHI価10〜20を示し、 B型インフルエンザウイルスと同定された。また、 小学校での集団発生患者由来の株からはB/Johannesburg/5/99にHI価10を示した。同定困難であった株を含めこれら17株のすべてについてインフルエンザ迅速キット“インフルA・B−クイック「生研」”を用い検査を行ったところ、 B型インフルエンザと判定された。さらにこれら17株をHA領域に設定したプライマーを用いてRT-PCR反応を実施した結果、 すべてB型インフルエンザウイルスと同定された。
3.考 察
3月下旬〜5月まで続いたインフルエンザ流行では、 患者の発生は6〜19歳の群(特に小学校高学年から中学校年齢)に多かった。この傾向は仙台市の報告(IASRホームページ病原体検出速報http://idsc.nih.go.jp/rapid/pr2681.html参照)と一致した。この時期患者からはB型インフルエンザウイルスが検出されており、 B型インフルエンザウイルスによる感染が主体であったと推察された。また、 分離されたウイルスは今シーズン用の同定キットで同定困難なものを含む2種類以上のウイルスによる流行であったと推察された。
流行は終息には向かっているものの、 6月現在もB型インフルエンザウイルスが検出されていることから、 今後の動向が注目される。
岩手県環境保健研究センター
高橋朱実 佐藤直人 藤井伸一郎 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正