無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離状況(2002年1〜6月)−岡山県

(Vol.23 p 195-195)

岡山県における無菌性髄膜炎患者の検体搬入およびその検体からのウイルス分離は、 1997〜1998年のエコーウイルス30型(E30)による大流行以後3シーズンはいずれも少数にとどまっていた。しかし2002年5月以降搬入される検体数が急増し、 それらの検体から高率にウイルスが分離されるようになった。

2002年1〜6月の検体採取月別ウイルス分離状況を表1に示す。FL、 RD-18SおよびVeroによる分離培養で、 エコーウイルス13型(E13)が2月、 5〜6月に12株、 E30が4〜6月に8株分離された。いずれのウイルスもFLでよく増殖し、 一部のE13はRD-18Sでも分離されたが、 Veroではまったく分離されなかった。いずれのウイルスもデンカ生研の単味抗血清20単位で容易に中和された。

E13とE30が分離された患者の年齢分布を表2に示す。E13では、 無菌性髄膜炎好発年齢の5〜9歳を中心に5〜13歳と比較的広い分布であったが、 E30では8人中3人が4歳で、 低年齢児に偏っていた。これは、 E13が岡山県では2001年11月に初めて分離されたウイルスであり、 抗体保有者はきわめて少ないと考えられるのに対し、 E30は1997〜1998年の流行で5歳以上では抗体保有者がある程度存在するためと考えられる。患者の居住地域は、 E13ではO市、 K市、 T市等都市部を中心に県下全域の5市町に及んだが、 E30では北部のT市に限定されていた。なお、 E13は流行性耳下腺炎、 ヘルパンギーナ等、 無菌性髄膜炎以外の患者咽頭ぬぐい液からも分離されており、 かなり広範に侵淫しているものと推察された。

以上より、 岡山県における無菌性髄膜炎は、 2002年6月現在、 E13による広範囲な流行とE30による地域限定的流行が同時進行していることが明らかとなった。E13は抗体保有者が少ないことから大流行を引き起こす恐れがあり、 E30の流行地域拡大の可能性とともに十分な注意を払って対処する必要があろう。また、 現在同定中の分離株の一部はE13およびE30に対する抗血清20単位で中和されない株であり、 他のウイルスが無菌性髄膜炎の流行に関与している可能性も考慮する必要がある。

岡山県環境保健センター 濱野雅子 葛谷光隆 藤井理津志 小倉 肇

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る