臓器移植および輸血のレシピエントにおけるウエストナイルウイルス感染の調査−米国

(Vol.23 p 257-258)

2002年8月1日に1人のドナーから4臓器を移植された4人のレシピエントがウエストナイルウイルス(WNV)感染を起こした事例(1名死亡、 2名入院中、 1名回復)が判明した。その後も他に問題とされる6件のケースがあり、 以下に示す。

1)肝臓移植および輸血を受けた47歳男性が発熱と脳炎を生じた。髄液検査にてIgM WNV抗体が陽性。患者は回復して退院した。

2)輸血を受けた24歳女性が髄膜炎を発症した。血清および髄液検査にてIgM WNV抗体が陽性。輸血血液の保管分を調べ、 一部がTaqManR(PCR法の一種)にて陽性を示した。その陽性ドナーの一部から製造された新鮮凍結血漿でTaqManR陽性のみならず、 生きたWNVも分離された。

3)輸血を受けた72歳男性が全身倦怠、 発熱を生じた。血清にてIgM WNV抗体が陽性。

4)輸血を受けた78歳女性が発熱、 精神状態の変化、 痙攣を生じた。血清と髄液でIgM WNV抗体が陽性。

5)輸血を受けた77歳男性が発熱、 頭痛を生じた。血清と髄液でIgM WNV抗体が陽性。結局、 進行性の脳炎で死亡した。

6)輸血を受けた55歳女性が発熱、 脳炎を生じた。血清でIgM WNV抗体陰性であったが、 輸血血液の保管分の1件がTaqManR陽性であった。しかし、 このIgM WNV抗体は陰性であったので、 ドナーの追跡調査を行ったところ、 その後IgM WNV抗体陽性となった。このドナーの症状はない。

新鮮凍結血漿から生きたWNVが分離されたことから、 本ウイルスはある血液成分のなかでは生存可能で、 輸血により伝播する可能性が示された。しかしこの症例に関しても、 輸血と関係なく感染した可能性も否定できない。また、 問題の新鮮凍結血漿を輸血された者すべてが感染している訳ではない。

WNV検査でルチーンの血液ドナースクリーニングに使えるものがまだないので、 開発が試みられている。 輸血や臓器移植のレシピエントはWNV感染の危険を知っておくべきではあるが、 輸血や臓器移植による利益は、 WNV感染の危険の可能性を上回るものである。

(CDC、 MMWR、 51、 No.37、 833-836、 2002)

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