Salmonella Enteritidisによる食中毒事例−福島県

(Vol.23 p 255-255)

2002(平成14)年6月27日、 相双保健所に匿名女性から「原町市内の弁当屋A店の弁当を食べた人が多数食中毒になっている。」との電話を受け調査を実施した。

原町市内で飲食店営業(仕出し、 弁当)の許可を取得しているA店を調査し、 当店の弁当を食べた人および事業所から食中毒になったとの苦情が多数あることが判明した。

調査の結果、 患者発生は、 2002年6月21日〜28日に及び(図1)、 摂食者1,706名(246事業所)、 患者数905名にのぼり、 発症率は53%に達した。症状は、 下痢、 腹痛、 発熱が見られた。

細菌学的検査は、 患者便43検体、 調理従事者便26検体、 食品(検食)22検体およびふきとり(施設内の容器器具、 設備)10検体について実施した。この結果、 患者便10検体、 調理従事者便3検体、 食品(21日検食炊き合わせ)1検体からSalmonella Enteritidisが検出された。ふきとり検体から原因菌は検出されなかった。また、 患者便4検体についてウイルス(SRSV、 アデノウイルス、 ロタウイルス)の検査を実施したがすべて陰性だった。

患者、 従事者、 原因食品から分離されたS . Enteritidis 14株について制限酵素Bln Iを用いてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によるDNA解析を実施した。電気泳動条件はパルスタイム5〜50秒、 電圧6V、 20時間で、 その結果を図2に示した。

供試した14株のBln IによるDNA切断パターンは、 患者由来株2株(No.6、 No.10)を除いた12株はすべて一致した。その一致しなかった患者由来2株は他の12株と比較しDNA断片の欠損および付加がみられたが、 Tenoverらの分類に従うと、 系統的に同じ、 または関係があると解釈できることから、 今回の14菌株つまり、 患者、 従事者、 食品(検食)由来株は同一由来である可能性が高いと考えられた。

本事例は、 疫学的調査ならびに細菌学的調査から当該業者Aが6月21日に調製した複合調理食品(弁当)によるサルモネラ食中毒と確定した。S . Enteritidisの検出された弁当の副食品が前日から調理されていたこと、 調理従事者の手洗い設備が小型のものであり全員が十分に使用できないスペースであったこと、 製造から販売まで5時間以上経過している弁当もあるなど、 施設管理運営の不備、 従業員に対する衛生管理の不徹底とともに、 生産能力を超えた弁当の製造販売により起きた食中毒と思慮される。

福島県衛生研究所 長澤正秋 須釜久美子 平澤恭子
福島県相双保健所
鈴木 洋 草野秀治 大竹俊秀 江尻美智子 薮内礼子

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