流行時期の違いにより病態の相違が顕著となったエコーウイルス11型の地域限局流行−香川県

(Vol.23 p 255-256)

2001年7月下旬に無菌性髄膜炎患者よりエコーウイルス11型(E11)が分離されたが散発発生に留まった。しかし、 2001年11月下旬に無菌性髄膜炎患者より分離以降は、 継続的な流行で推移して2002年5月中旬より分離患者数は急激な増加を示し、 6月127例をピークとした292例(分離数344株:髄液236件、 咽頭ぬぐい液84件、 糞便23件、 尿1件)に達する大規模な流行を引き起こした。今季流行は、 E11単独血清型による流行が2001年11月下旬より継続したが、 2002年7月中旬にエコーウイルス13型(E13)の侵淫により、 県下では、 これ以降は2血清型の混在流行となった。エンテロウイルスレファレンスセンターの情報によると、 2001年のE11は島根県45例、 広島県35例、 広島市33例、 鳥取県5例、 岡山県1例、 愛媛県1例、 香川県14例の報告があり、 2002年は高知県17例、 島根県7例、 愛媛県5例、 広島県1例、 香川県278例であった。2002年の島根県、 広島県での分離例は流行の継続とみられ、 2002年は四国地域に限局しており、 中四国内でも地域特異的傾向が顕著にみられた。

E11の流行期間中の疾患別状況は、 患者数292例中、 無菌性髄膜炎229例 78%、 呼吸器系疾患37例 13%、 不明熱8例 2.7%、 熱性痙攣5例 1.7%、 発疹症4例 1.4%、 脳炎3例 1.0%、 川崎病2例 0.7%、 脳脊髄炎、 ギラン・バレー症候群、 嘔吐下痢症、 無熱性痙攣各1例 0.3%であったが、 2001年11月中旬から冬季を中心として流行した2002年3月までは、 無菌性髄膜炎は僅かに患者数43例中4例 9.3%であり、 呼吸器系疾患32例 74%を主な分離例とした(本月報Vol.23、 No.3参照)のに対し、 4月以降では、 呼吸器系疾患からの分離例は患者数249例中4例 1.6%と減少し、 無菌性髄膜炎が患者数225例 90%と高率に占める分離状況となり、 流行時期および流行状況により病態に明かな相違が認められた()。

また、 男女比並びに年齢別罹患状況も同様な傾向を示し、 男女比は、 2002年3月までは男児22例 51%、 女児21例 49%とほぼ同数であったが、 4月以降では男児168例 68%、 女児81例 33%と、 男児が多い傾向を示した。年齢別では、 2002年3月までは男児では2歳5例 23%、 1、 4歳各3例 14%、 3、 8歳各2例 9.1%、 女児では3歳5例 24%、 2歳4例 19%、 1歳3例 14%、 0、 4歳各2例 9.5%の順に分離例が多く、 男児は1〜4歳、 女児は1〜3歳に罹患者が多発した。一方、 4月以降は、 男児では0歳24例 14%、 5、 6歳各19例 11%、 4歳18例 11%、 女児では0歳16例 20%、 6歳11例 14%、 4歳10例 12%、 1、 5歳各8例 9.9%と、 男女ともに0歳からの分離例が多く、 次いで男児は4〜6歳、 女児1歳および4〜6歳と、 罹患者の年齢も異なった。

最後にE11、 E13の流行は9月に入りほぼ終息したが、 E11の冬季流行は、 インフルエンザウイルスの流行期に一致したことにより、 2〜3月に咽頭ぬぐい液検体からE11とインフルエンザA香港型4例、 Aソ連型3例、 B型3例との混在した同時分離例が確認され、 脳への侵襲は、 分離例が急増した5月中旬〜6月中旬に集中した。

香川県環境保健研究センター 三木一男 亀山妙子 山西重機

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