Salmonella Enteritidisによる食中毒事例−愛媛県

(Vol.23 p 289-290)

愛媛県において今夏2例のSalmonella Enteritidisによる食中毒が発生した。ファージ型別の結果、 事例1はPT6b、 事例2はPT36と判明した。本県では1997(平成9)年度から食中毒由来のS . Enteritidisについてファージ型別を国立感染症研究所に依頼しているが、 PT6bおよびPT36は県内では初めての分離であった。また、 国内においてもPT6bは初めての分離例と考えられ、 PT36は集団事例において分離例が報告されていないため(本月報Vol.18、 No.3・特集Vol.21、 No.8・特集参照)これらの事例の概要を報告する。

事例1:2002年8月5日、 北条市内の医院から「8月4日に下痢、 発熱、 腹痛の食中毒症状を呈した患者6名を診察した」との旨、 松山中央保健所に届け出があった。同保健所が調査したところ、 7月31日の北条市内の夏祭りに参加した地域住民34名が8月1日5時30分ころから下痢、 発熱、 腹痛の症状を訴え、 7医療機関で27名が受診し、 1人入院していることがわかった。患者に共通する食品は、 地区の婦人団体が公民館で調理したちらし寿司であり、 この食品は一部会場で提供された他は、 あらかじめ注文のあった者にのみ配られていた。

同保健所は食中毒と推察し、 患者便の検査を実施したところ、 6名からS . Enteritidisが検出された。患者の症状、 潜伏時間が同菌の症状等に当てはまることなどから、 今回の食中毒はS . Enteritidisによるものと断定し、 ちらし寿司の錦糸卵を原因食品と推定した。しかし、 発生当時の食品・食材は残っていなかったことから、 汚染経路を細菌検査から特定することはできなかった。喫食者数114名、 発症者数56名(年齢1歳〜78歳)で、 発症率49%、 平均潜伏期間は33時間であった。患者の主症状は下痢(93%)、 腹痛(64%)、 発熱(59%)であった。さらに12薬剤(アンピシリン、 セフォタキシム、 カナマイシン、 ゲンタマイシン、 ストレプトマイシン、 テトラサイクリン、 クロラムフェニコール、 シプロフロキサシン、 トリメトプリム、 ナリジクス酸、 ホスホマイシン、 ST合剤:BBLセンシディスク)を用いた薬剤感受性試験において、 すべての分離菌株はストレプトマイシン、 テトラサイクリンに対して耐性を示した。

事例2:2002年8月6日、 今治市内の事業所から「従業員6名が8月4日早朝から食中毒症状を呈し、 医療機関を受診した」との旨、 今治中央保健所に連絡があった。同保健所において調査したところ、 患者6名は8月4日午前6時頃から下痢、 発熱、 腹痛等の食中毒症状を訴え、 今治市内の2医療機関で受診していることがわかった。患者らは8月3日に今治市内の飲食店が調製した昼食弁当を喫食しており、 昼食弁当の他の配達先においても同様の症状を訴える患者がいることが判明した。同保健所は食中毒と推察し、 患者および従業員の便、 飲食店のふきとり検査を行ったところ、 10名の患者および2名の従業員の便からS . Enteritidisが検出された。患者の喫食状況や潜伏時間等よりS . Enteritidisによる食中毒と断定した。

事例1と同様、 発生当時の食品・食材は残っていないため原因食品を特定することはできず、 ふきとり調査からもS . Enteritidisは検出されなかった。しかし、 昼食弁当の調理工程の調査において、 卵焼きは前日から卵が割り置かれ、 調理後も室温に長く放置されるなど食品取り扱い上の不備が認められた。患者および従業員からS . Enteritidisが検出されたことと併せて、 卵焼きを原因食品と推定した。喫食者294名、 発症者数229名(年齢0歳〜88歳)で発症率78%、 平均潜伏時間は26時間であった。また、 事例1と同様の薬剤感受性試験においてすべての分離菌株に耐性菌は認められなかった。

愛媛県立衛生環境研究所 青木紀子 田中博 大瀬戸光明
松山中央保健所 山下秀仁 川本奈貴佐 藤田 淳
今治中央保健所 高智健二 玉田裕子 望月昌三 中村澄夫 山本真司
        窪田なるみ 北川智惠 三栗野直美

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