小学校で発生した腸管出血性大腸菌O111:H-の集団感染事例−岩手県

(Vol.23 p 291-292)

2002年7月、 盛岡保健所管内のA小学校において、 5年生11名、 6年生3名および5年生の家族1名の計15名が腸管出血性大腸菌(EHEC)O111 VT1産生に感染した事例について概要を報告する。

7月2日および3日に、 それぞれ別の医療機関から盛岡保健所に「A小学校の5年生1名からEHEC O111 VT1産生が分離された」との報告があった。盛岡保健所では、 同一小学校の生徒2名がEHEC O111に感染していることから、 その旨をA小学校に情報提供し、 生徒および職員の検便、 疫学調査等を実施するとともに、 感染の拡大防止を図るため、 手洗の励行等の衛生指導を行った。

感染者数の推移は、 図1のとおりである。7月4日に実施した5年生(141名)および職員(9名)の検便の結果、 新たに5年生9名の感染者が判明した。また9日には、 その感染者の家族1名が感染していることが判明した。医療機関から報告のあった2名および検便の結果判明した9名は、 すべて同一クラスであった。

その後、 12日および15日に医療機関からの報告により、 6年生2名が感染していることがわかった。5年生の感染者からの二次感染を疑い、 15日に6年生(129名)および職員(5名)の検便を実施した結果、 新たに6年生1名が感染していることが判明した。なお、 これ以降の感染の拡大はなかった。

感染者が5年生の1クラスに集中していたことから、 原因として当初、 5年生1クラスに共通する食品として、 6月20〜21日にかけて行われた林間学校での食事が疑われた。しかし、 食品の残品はすでになく、 当該施設の使用水、 ふきとり検査および職員の検便を実施したが、 原因菌は分離されなかった。

感染者15名から分離された菌株は、 すべてVT1産生であり、 また、 パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)によるDNA切断パターン(図2)はほぼ一致し、 同一由来株であると考えられた。

今回の調査では、 感染者間(5年生11名および6年生3名)におけるプール等の特別な接触等がないこと、 また、 同一由来株による感染であることから、 5年生1クラス間で感染が蔓延し、 6年生3名および家族1名に二次感染したものと推測されたが、 感染源等の原因解明には至らなかった。

岩手県環境保健研究センター
藤井伸一郎 佐藤直人 高橋朱実 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正
岩手県盛岡保健所 予防課・衛生課

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