インフルエンザワクチンは1962年から勧奨接種として実施が開始されたが、 1976年からは予防接種法に基づいた一般的臨時接種として小中学生に対して接種されるようになった。しかし、 1987年からは保護者の意向により希望者に接種する方式に変更になり、 1994年の予防接種法改正により任意接種のワクチンに変更となった。
これらの変更に伴い、 接種人数は年々減少し、 厚生省(現:厚生労働省)の調査によると接種率は1979年の67.9%から、 1992年には17.8%まで低下した(図1)。細菌製剤協会によるとインフルエンザHAワクチン製造量は、 1968年29,634lから1994年300lにまで低下した。
その後、 高齢者施設等におけるインフルエンザの流行、 さらにはインフルエンザによる高齢者死亡数の増加、 小児におけるインフルエンザ脳症の問題が報道されるようになり、 1999年冬には接種希望者が急増し一時的にワクチン不足が生じた。
ハイリスク者に対するインフルエンザワクチンの需要の高まりとともに、 厚生労働省は2001年の予防接種法改正に伴い、 65歳以上の高齢者および60〜64歳の心臓、 腎臓、 呼吸器、 またはヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に一定の障害を有する者に対するインフルエンザワクチン接種を定期接種とし、 従来の予防接種を1類疾病、 高齢者に対するインフルエンザワクチンを2類疾病として分類し、 法に基づいた形での接種を導入した(本月報Vol.22, No.12参照)。この法律改正により高齢者が一部公費負担で、 予防接種法の枠組みでインフルエンザワクチンを接種することが可能となった(表1)。
「第5回インフルエンザワクチン需要検討会」報告によると、 本年度のワクチン需要は1,049万〜1,237万本程度、 今年度のインフルエンザワクチン製造予定量は、 1,300万本である。厚生労働省医薬局血液対策課(「平成13年度予防接種法に基づく高齢者のインフルエンザワクチン予防接種状況調査報告」)によると、 2002(平成14)年2月15日現在、 各市区町村の予防接種法に基づく高齢者に対するインフルエンザワクチンの接種率は27.45%であったと報告している(表2)。
国立感染症研究所・感染症情報センター 多屋馨子