インフルエンザホットライン

(Vol.23 p 313-314)

インフルエンザホットラインは、 インフルエンザの予防接種や一般的な診断と治療および流行状況などに関する情報提供を目的として、 厚生労働省が国立感染症研究所感染症情報センター内に1999(平成11)年に開設した。対象は一般および保健医療関係者で、 毎年11月〜3月の開設期間中、 相談や質問などを電話、 電子メール、 Faxで受け付け、 感染症情報センターおよび実地疫学専門家養成プログラム研修生の医師が個別に対応している。開設初年度の平成11年度(1999/2000シーズン)は約2,300件、 平成12年度(2000/01シーズン)は約3,300件の相談や質問などを受け付けた。

昨年度(2001/02シーズン)は2001年11月12日〜2002年3月30日まで開設され、 電話1,821件、 電子メール246件、 Fax32件の合計2,099件を受け付けた。相談のほとんどは一般から(83%)であったが、 開業医などの医療関係者(9%)や小中学校の養護教諭や保健所、 保健センターなどの保健行政関係者(4%)からの問い合わせや情報提供依頼もあった。

2001/02シーズンのインフルエンザは過去10年間と比較した場合、 比較的小規模な流行であったが、 予防接種法改正によりインフルエンザが定期接種の「2類疾病」に定められたことや、 国内で初めての牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛の発生が確認され、 牛由来成分を含む食品や医薬品の安全性に疑念が生じたことに関連してインフルエンザワクチンが牛由来成分を含有しているか否か等が主な話題であった。

昨シーズン、 一般からの相談で最も多かったのはインフルエンザワクチンの接種回数に関するものであった()。インフルエンザワクチンの接種回数は、 65歳以上は1回接種でも効果が得られるとの情報が比較的知られており相談なども少ないが、 65歳以下の接種回数に関しては、 医師によって意見が異なることもあり判断に迷って利用されているものと思われた。

次いで多かったのは乳幼児へのワクチン接種に関する質問で、 乳児に関してはワクチン接種を行うべきかどうかに関する相談が多く、 やや年長の幼児の場合は接種することは決めているが、 ワクチンの効果・副反応・アレルギー体質との関連やインフルエンザ全般に関する疑問や不安の相談が多い。

またワクチン接種時期に関して、 11月などシーズン初期には早期に接種することでシーズン中に効果がなくなってしまわないかといった不安や、 1月以降流行のピーク時やシーズン後半には今から接種しても間に合うのかといった相談も多く寄せられた。

一方で、 小中学校の養護教諭や保健所、 保健センターなどの保健行政関係者からはインフルエンザの流行状況に関する問い合わせが多く、 学級通信や地域情報誌などに利用されているようであった。また保健所、 保健センターからは、 妊婦や授乳婦に対するワクチン接種に関する問い合わせも比較的多かった。医療機関、 特に医師からはアレルギー疾患や膠原病、 悪性腫瘍などの基礎疾患を持つ人に対するワクチン接種、 抗インフルエンザ薬投与の是非に関する問い合わせが、 また高齢者施設の関係者からは予防接種法に関する問い合わせが多かった。

月別の相談件数は11月904件(43%)とホットライン受付開始直後が最も多く、 12月500件(24%)、 1月338件(16%)、 2月263件(13%)、 3月93件(4%)と漸減した。11〜12月にかけ、 多くのメディアがホットラインの紹介を含め、 インフルエンザに関する報道を行うことが影響していたと思われる。相談内容は、 11月および12月はワクチン接種に関するものが多く、 1月以降はインフルエンザに罹患した場合の対処方法などの医療相談や学校や施設内での流行予防や対処に関する質問が増えていた。

また例年、 主に一般からの電話相談者に対してはアンケートへの協力を依頼しており、 昨年は相談者の年齢と一般的なインフルエンザ情報をどのように入手しているのかについての調査を行った。

一般の相談者のうち約4割が乳幼児の母親世代と思われる30代の女性であった。これは乳幼児の母親世代のインフルエンザ関連情報に対する関心の高さを示していると思われた。

インフルエンザに関する情報をどのように入手しているかについては、 新聞と答えた人が圧倒的に多く、 ついでインターネット、 テレビの順であった。

インフルエンザホットラインに頻繁に寄せられる相談や質問は、 社会が求めている情報であると考えられる。今後、 小児や65歳以下の成人のワクチンの接種回数や、 乳幼児のワクチン接種、 接種時期などに関する情報を、 より分かりやすく、 新聞やインターネットなどの効果的な媒体を通じて発信していく必要があると思われた。

国立感染症研究所・感染症情報センター
鈴木里和 大山卓昭 谷口清州 岡部信彦 ホットライン担当スタッフ

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