保育園で感染が拡大した腸管出血性大腸菌O157:H7感染事例−石川県

(Vol.23 p 320-320)

2002年9月、 加賀市内の保育園において腸管出血性大腸菌O157感染症の集団発生事例があったので、 その概要を報告する。

9月12日午前、 加賀市保育園担当課から南加賀保健所加賀地域センターに、 11日夕方、 同市内の保育園に通園する4歳男児2名が、 下痢(粘血便)の症状があったため受診し、 また他の園児十数名にも腹部症状があるとの通報があった。また、 同日午後、 医療機関から、 前記4歳男児2名のうちの1名から腸管出血性大腸菌O157(VT産生)(以下O157)が分離された旨の届け出があった。

当保健所が患児の通園していた保育園(園児71名、 職員13名)において聞き取り調査を実施したところ、 届け出患児以外に12名の有症者がいることが判明し、 感染症現地対策本部(以下、 現地本部)を設置した。

同日より、 保育園の園児と職員、 有症者の家族および接触者を対象に検便を行うとともに、 保育園に保存されていた検食(8月26日〜9月11日分)の検査ならびにふきとり検査を行った。その結果、 園児17名(有症者14名、 健康保菌者3名)、 職員2名(健康保菌者2名)、 有症者の家族等13名(有症者4名、 健康保菌者9名)の計32名からO157が分離された。なお、 検食およびふきとりからはO157は分離されず、 感染源は特定できなかった。

9月19日より菌陰性者について再検便を実施したところ、 新たに患児家族4名(健康保菌者4名)からO157が分離され、 最終的には合計36名(有症者18名、 健康保菌者18名)からO157が分離された。内訳は、 有症者:0歳児1名、 1歳児4名、 2歳児4名、 3歳児2名、 4歳児1名、 5歳児2名、 家族4名であり、 健康保菌者:3歳児1名、 4歳児1名、 5歳児1名、 職員2名、 家族13名であった。

9月27日以降に新たな感染者の発生はなく、 10月21日に開催された現地本部会議で今回の集団発生事例は終息したと判断された。

分離した菌株はすべてO157:H7(VT1&VT2産生)であり、 パルスフィールド・ゲル電気泳動法による遺伝子解析の結果、 すべてのDNA切断パターンが一致し、 同一由来株であることが確認された。

今回の事例では、 最初の患児届け出時には、 既に保育園内に10名以上の有症者が存在していたことから、 当保健所が察知する前に二次感染が成立し、 園児や家族への感染が拡大していたものと推測される。

保育園は、 感染に対する抵抗力が弱い小児の集団であり、 おむつを使用している乳幼児もともに生活している。そのため、 おむつの取り扱い方法が不適切であった場合、 O157等の感染が拡大する可能性が高い。そこで、 保育園等の乳幼児施設における感染の拡大防止には、 おむつ等の汚物の処理方法の見直しや手洗いの徹底、 並びに日々の欠席状況や健康状態の把握による異常時の早期発見とその連絡体制の確立が重要であると考えられる。

石川県南加賀保健所
里見良二 川上慶子 山田恵子 北川恵美子 中村辰美 川尻義典 伊川あけみ
石川県南加賀保健所加賀地域センター 寺西久子 作美清恵 能登隆元 見谷 亨
石川県保健環境センター 倉本早苗 米澤由美子 芹川俊彦

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