集団で発生した腸管出血性大腸菌O26感染事例−宮城県

(Vol.23 p 320-321)

2002(平成14)年7月24日、 医療機関より腸管出血性大腸菌(EHEC)O26(VT1)感染症の1名が届け出され、 その後の調査で集団感染であると判明したので、 その概要について報告する。

届け出患者は2歳の女児、 下痢症状で15日に医療機関を受診し、 治療を受けた。しかし、 症状は快復せず19日に再び受診し、 便の細菌検査を行った結果EHEC O26が検出された。患児の兄も下痢・発熱の症状があり、 しかも同じ保育所に通園していたため、 保健所で保育所の園児について聞き取り調査を行った。その結果、 調査時点では、 重い下痢や血便等の症状を呈する園児はいなかったものの、 7月8日に7名が軟便であったことが判明し、 園児全員と保育所職員について健康調査と検便を実施した。菌が検出された園児の家族についても随時、 調査と検便を実施した。さらに、 感染源解明のため、 保育所に保存してあった7月6日〜7月19日までの給食・おやつの検食についてもO26検査を実施した。細菌検査は7月25日〜8月9日まで総検体数 238件について実施し、 最終的に患児を含め園児11名、 その家族(7家族)10名の合計21名から菌が検出された。

検出された21菌株はすべてEHEC O26:H11 VT1+であり、 パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)解析から、 450kb以下の領域でのPFGEパターンがすべて一致し、 この集団感染は同一由来菌株によると推察された。

保育所には0歳〜5歳までの園児が年齢ごとに6クラスに分かれて入所しており、 表1にO26検出状況をクラス別および職員、 家族別に分けて示した。届け出された患児が在籍する1歳児クラスでは15名中5名(33%)から高率に検出された。また、 その他のクラスからは6名検出されたが、 4名は1歳児クラスに同胞が在籍していた。さらに、 1歳児クラスの5名の家族について検便を行ったところ、 計9名から菌が検出された。

以上から、 本事例の感染は1歳児クラスが中心となり拡大したと考えられた。

一方、 1歳児クラスの園児2名が調査後のそれぞれ25日、 26日に下痢症状を呈したことから、 両者は患児発症後に保育所で感染した可能性が高いと考えられた。また、 同クラスの園児1名は7月25日の検査でO26陰性であったが、 28日に下痢の症状を呈したため8月3日に再度検査を実施しO26が検出され、 この園児は25日以降に感染したと推測された。

なお、 検食および職員から菌が検出されず感染源の特定には至らなかったが、 保育所ではビニールプールを使用しており、 7月初旬には下痢症状を伴った園児も健康園児と同じビニールプールを利用していたことから、 これが感染を拡大した要因の一つと考えられた。

本事例は、 早期に集団感染を感知したにもかかわらず同胞や家族のへの二次感染の拡大が示唆され、 適切な対応が感染拡大防止に重要と思われた。

この事例の調査を担当した関係保健所の皆様に感謝申し上げます。

宮城県保健環境センター・微生物部 齋藤紀行 佐々木美江 有田富和 畠山 敬 秋山和夫

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