大阪市内の一医療機関を受診した呼吸器症状を呈する3名の学童のうち2名より、 AH3型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。
患者は大阪市内の同じ地区に住む6歳〜9歳の学童で、 発症日は2002(平成14)年11月11日〜14日である。受診時に鼻腔ぬぐい液を採取し、 インフルエンザ抗原迅速検出用試薬(ラピッドビューインフルエンザ A/B;住友製薬バイオメディカル社)にて検査をした結果、3名ともインフルエンザ抗原陽性であった。患者は、 38.5℃〜40.0℃の発熱、 筋肉痛、 咽頭痛、 頭痛などを呈したが、 いずれも抗インフルエンザ薬投与により1〜2日後には軽快した。
3名からの鼻腔ぬぐい液は、 発症後1〜2病日に採取しMDCK細胞に接種した。2名の検体を接種した細胞では、 1回目の培養で、 接種3日目から明瞭なCPEがみられた。残り1名はウイルス分離陰性であったが、 40℃の高熱、 筋肉痛、 咽頭痛を伴い典型的なインフルエンザ症状を示していた。なお、 この患者は2002年10月22日にインフルエンザワクチン接種を受けていた。
CPEを示した培養液について、 七面鳥赤血球(0.5%)でのHA試験および国立感染症研究所から分与された2002/03シーズン用インフルエンザウイルス同定キットでのHI試験を行った。その結果、 2名から分離されたウイルス株は抗A/Moscow/13/98(H1N1)血清(ホモ価 2,560)、 抗A/New Caledonia/20/99(H1N1)血清(ホモ価 320)、 抗B/Shandong(山東)/7/97血清(ホモ価 160)および抗B/Hiroshima(広島)/23/01血清(ホモ価 320)ではいずれもHI価<10であったが、 抗A/Panama/2007/99(H3N2)血清(ホモ価 640)に対しては2株ともHI価 640を示した。以上の成績より、 今回分離したウイルスはA/Panama/2007/99(H3N2)ワクチン株に類似したAH3型インフルエンザウイルスであると同定された。
大阪市立環境科学研究所 村上 司 久保英幸 入谷展弘 春木孝祐
浜本小児科病院 浜本芳彦