2002/03シーズンに埼玉県内でB型インフルエンザウイルスが最初に分離された事例について以下に概要を述べる。
分離例1:2002(平成14)年11月10日、 埼玉県東松山保健所に管内の感染症発生動向調査定点医療機関から、 一小学校にて発熱、 頭痛等の症状を呈する児童が多数発生しているとの情報が寄せられた。同小学校の4年生児1人から採取された咽頭ぬぐい液を衛生研究所で、 MDCKおよびCaCo-2に接種したところCPEが観察された。その培養上清を国立感染症研究所から分与された2002/03シーズン用キットを用いてHI試験を行ったところ、 B/Shandong(山東)/07/97抗血清に対してHI価20 (ホモ価80)、 他の坑血清には<10を示したことからビクトリア系統のB型インフルエンザウイルスであると同定した。なお当該小学校においては発症児童の増加が見られなかったため、 学級閉鎖等の措置は取られなかった。
分離例2:2002(平成14)年11月19日、 埼玉県坂戸保健所管内の一小学校において3年生(3学級80人)44人が欠席したため、 11月20日から2日間の学年閉鎖となった。発症児の中には、 医療機関を受診し、 インフルエンザ迅速診断キットで検査された者もいたが陰性と判定された。原因究明のため同保健所により38.5℃以上の発熱を呈している児童5名から咽頭ぬぐい液が採取され、 衛生研究所においてウイルス検査を実施した。5検体はいずれも迅速診断キット(ラピッドビュー)では陰性であったが、 MDCKによるウイルス分離では4検体で接種4日目にCPEが観察された。上記キットを用いたHI試験では、 B/Shandong/07/97抗血清に対しHI価10〜20 (ホモ価40)、 他の抗血清には<10であったことから、 ビクトリア系統B型インフルエンザウイルスであると同定した。
埼玉県におけるインフルエンザウイルス分離状況は、 数年来、 A型ウイルスの分離が先行し、 それに遅れてB型ウイルスが分離されるというパターンであった。今シーズン初頭のB型分離例が偶発的なものなのか、 今後の流行につながるのかを慎重に監視する必要があろう。
埼玉県衛生研究所ウイルス担当
島田慎一 篠原美千代 内田和江 木村一宏