中国旅行での赤痢(Shigella flexneri 4a)感染事例−山形県

(Vol.24 p 6-7)

2002(平成14)年11月6日にA病院から、 B町在住70歳の女性を細菌性赤痢と診断したとの届け出があった。患者は10月下旬〜11月上旬にかけ中国ツアー(西安、 敦煌、 トルファン、 ウルムチ)に参加しており、 旅行中の10月31日から腹部の違和感、 下痢を発症していた。帰国後、 39℃の発熱もあり11月4日A病院を受診、 検便の結果11月6日に赤痢菌が検出された。

このツアーは添乗員も含め山形県在住の19人の団体で、 旅行中は同一行動で飲食も同じとのことであった。また届け出された患者は、 旅行中に発症していることから旅行中の感染が推定され、 ツアー参加者の健康調査、 検便が行われたところ、参加者の多くが旅行中から下痢をしていたことか判明した(16/19人)。11月7日から行われた検便の結果、 上記患者を除く18人中4人から赤痢菌が検出された。患者家族の健康調査では異常はみられず、 検便でも赤痢菌は検出されなかった。

旅行中の飲水にはペットボトル入りのミネラルウォーターを使用するなど注意をしていたが、 食事に野菜サラダやカットフルーツなどの非加熱食品も提供されていた。しかし、 感染の原因となった施設や食品等は特定されなった。

5人の患者から検出された赤痢菌は定型的な赤痢菌の性状(乳糖、 白糖、 ガス、 リジン、 運動性いずれも陰性)を示し、 PCRでinvE 遺伝子が確認された。デンカ生研の免疫血清を用いた検査では多価血清はB多価、 型血清はIV、 群血清は7, 8に凝集がみられ、 Shigella flexneri 4aと判定された。S. flexneri は2aが多く検出されるが、 今回の事例は比較的希な型である4aであった。ABPC、 CTX、 KM、 GM、 SM、 TC、 CP、 TMP、 CPFX、 NA、 ST、 FOMの12薬剤について、 1濃度ディスク法による薬剤感受性試験を行ったところ、 いずれの株もCTX、 KM、 GM、 CPFX、 FOMの5剤に対し感受性であったが、 他の7剤は耐性であった。また、 5人から分離された菌のXba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンは同一であった。PFGEおよび薬剤感受性パターンから、 5人の患者は同じ感染源に曝露したことが推定された。

山形県衛生餅究所
大谷勝実 池田辰也 最上久美子 村山尚子
村山保健所
庄内保健所

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