わが国における新血清型赤痢菌の検出例(1985〜2002年)

(Vol.24 p 7-8)

赤痢菌の血清型分類は、 1984年にInternational Committee on Systematic Bacteriology, Subcommittee on the Taxonomy of Enterobacteriacae(国際細菌分類委員会、 腸内細菌分類小委員会)により、 血清型の追加を主とする改定がなされ、 現在この血清型分類に基づいた血清型別が、 わが国はもとより国際的に広く用いられている。しかしこの改定以降も、 この血清型分類に該当しない追加すべき新血清型のあることが報告されてきている。表1に、 これまでに新血清型として提案されている各血清型を菌種別に示した。Shigella dysenteriae で6種、 S. flexneri で2種、 S. boydii で3種、 合計11種類が報告されている。

私共は、 赤痢菌の血清型別試験に、 上述の新しい血清型分類に基づき整備された市販の診断用抗血清を使用してきているが、 生化学的性状や病原性において赤痢菌と疑われるにもかかわらず、 これら既知血清型に一致しない分離株に少なからず遭遇している。そしてそれらの菌株についてはO抗原分析を実施し、 既知あるいは提案中の新血清型との異同について検討してきた。本報では、 東京都立衛生研究所において分離あるいは同定依頼された菌株において、 表1に示した新血清型に該当することが確認された赤痢菌の血清型と、 それらの検出例について紹介する。なお、 検討を始めた1985年以降1995年までの新血清型菌の検出状況については、 本月報(Vol.17、 No.6、 1996)で紹介した。その後、 著者らが新たに3種の新血清型を報告するなど、 検出件数がかなり増加した。

2002年までの検出例を表2に示す。S. dysenteriae ではI9809-73、 E23507、 E670/74、 93-119および204/96の5種、 S. flexneri では88-893(群抗原6を保有するものと、 3, 4を保有するものがある)および89-141(群抗原3, 4を保有するものと、 7, 8を保有するものがある)、 S. boydii ではE16553およびSM00-27、 合計9種類の新血清型赤痢菌が103症例より分離されている。なお、 S. flexneri 88-893の8症例と同89-141の3症例およびS. boydii の1症例以外は、 主としてインド亜大陸や東南アジアから帰国した海外旅行者による輸入事例であった。

下痢症患者、 特に海外旅行者からの病原菌検索の際は、 ここに述べたような新血清型赤痢菌についても十分注意を払う必要がある。

東京都立衛生研究所多摩支所 松下 秀 加藤 玲

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