インフルエンザワクチン関連副反応、 2001/02シーズン−カナダ

(Vol.24 p 15-16)

カナダにおける2001/02シーズンの受動的サーベイランスの結果、 カナダにおいてインフルエンザワクチン接種は、 インフルエンザとその合併症の予防やコントロール、 そして全国的流行に備えるために必要不可欠なものと考えられている。オンタリオ州やユーコン州では州民すべてに無償で提供されており、 その他のほとんどの地区でも、 高リスク群の人々に対して公的補助の下に行われている。さらに、 労働事業体などを中心とした私的補助のシステムもある。しかし全国民への接種義務化の導入に関しては、 医療関係者より安全性の面からの危惧が表明されていた。

2000/01シーズンに、 赤目、 呼吸器症状(咳嗽、 咽喉痛、 呼吸困難、 胸部圧迫感、 喘鳴)、 顔面浮腫などが生ずるoculo-respiratory syndrome(ORS)の報告数が非常に多かったことを受けて、 2001/02シーズンには保健医療機関が中心となり、 インフルエンザワクチン接種後の副反応についてより詳細な強化サーベイランスを行った。

カナダでの副反応報告はほとんどの州で、 医療提供者からの任意の報告を受動的に集める形で行われている。これに加え、 12の小児病院がImmunization Monitoring Program, Active(IMPAC)と呼ばれるプログラムに沿って、 積極的に症例を集めている。副反応報告は、 公衆衛生上の、 特に小児領域の問題点とされる25の項目(VACART)について選択する方法と、 その範疇に入らない記述的表記を後から分類する(WHOART)方法のいずれかによって集められている。

2001/02シーズンに9,842,601接種分(dose)のインフルエンザワクチンが流通し、 Health Canadaが受領した副反応報告総数は1,800例、 すなわち全バイアルが接種されたとして100万接種に183例の割合であった。報告の76%が女性で、 47%が50歳以上であった。95%がインフルエンザワクチンの単独接種で、 残り(96人)はその他のワクチンとの同時接種であったが、 両群間における副反応報告率には大きな差はなかった。

最も多く報告された副反応はORSで、 502例に見られた。赤目および呼吸器症状に関して、 発症までの期間の中央値はそれぞれ8時間と6〜12時間、 症状持続期間の中央値はそれぞれ24時間と16〜36時間であった。主な副反応を100万接種に対して示すと、 ORS 51.0、 胸痛41.4、 倦怠感36.9、 頭痛36.8、 発熱30.3、 アレルギー反応27.5の報告数であった。副反応報告事例の大半は特に治療を必要としなかったが、 21%については医療機関を受診したか、 もしくは相談を行った。3日以上の入院が必要となった例が25例あった。重篤な副反応としては、 アナフィラキシー(9.0/1,000万接種)、 ギランバレー症候群(1.0/300万接種)、 痙攣(1.0/300万接種)、 麻痺(1.0/250万接種)、 髄膜炎/脳炎(1.0/300万接種)などが認められた。また、 接種後の死亡例も60歳以上の2例が報告されているが、 重篤な副反応とも併せて、 死因および接種との因果関係は明らかでない。

ORS発症のメカニズムは依然として不明であるが、 今回特に全数が報告されるよう留意してサーベイランスを行った。不完全な報告しか得られなかったものもあり、 あくまでも任意報告であることや、 地域により報告率にばらつきがあることなどを考慮すると、 今回の結果の解釈は難しいが、 副反応のサーベイランスの重要性は変わらない。しかしながら今回の結果からは、 特にインフルエンザワクチンの安全性を脅かす問題点は指摘されなかったと言えるであろう。

(Canada CDR、 28、 No.23、 2002)

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