仕出し弁当を原因としたナグビブリオによる食中毒事例−福岡市

(Vol.24 p 11-11)

探知:2002(平成14)年7月31日、 嘔吐・腹痛・下痢等の食中毒症状を呈し入院した旨、 市民から保健福祉センターに連絡が入った。

患者の状況:2002年7月29日の夏祭りで配布された弁当を食べた57名中29名が発症した。そのうち8名が受診し、 うち1名が入院した。弁当は15:00頃配達、 16:30に配布されそれぞれ家庭に持ち帰り食べている。患者年齢は表1、 潜伏時間は表2のとおりである。症状は腹痛(79%)、 下痢(97%)、 発熱(14%)、 嘔吐(28%)、 吐気(17%)、 頭痛(7%)であった。

検査結果:下記の検査で、 菌株、 有症者便、 弁当残品から白糖分解性の黄色集落を形成するVibrio cholerae non-O1(以下ナグビブリオとする)が検出された。

 医療機関で分離された菌株 1件(うち陽性1件)
 有症者便 13件(うち陽性8件)
 従業員便 4件
 弁当残品 2件(うち陽性2件)
 ふきとり 5件(冷蔵庫取っ手2件、 包丁、 まな板、 蛇口)
 井戸水  6件

弁当の内容は鶏唐揚げ、 ウインナー、 牛肉甘辛炒め、 ザーサイ、 煮豆、 がめ煮、 シャケ、 たくわん、 白ご飯であった。そのうち牛肉甘辛炒め・がめ煮・白ご飯からナグビブリオが検出された。

分離されたナグビブリオのコレラ毒素(CT)の遺伝子についてPCR検査を行ったが陰性であった。参考までにTDH、 TRH、 VTの遺伝子についてもPCR 検査を行ったがすべて陰性であった。

床の清掃用に使われている井戸水が汽水域に近く、 そこからの汚染の可能性を考え、 8月5日・25日のそれぞれの干潮時と満潮時に採水し検査を行った。しかし、 ナグビブリオは検出されなかった。

調理施設等の調査結果:弁当は当日午前1時から下処理開始、 午前9時にでき上がった(おかずの一部の鶏唐揚げ、 煮豆、 がめ煮は午前10時頃調理開始)。調理後はさまして保存し、 15時に常温で配送した。なお当日、 同様のメニューを 650食販売しているが、 他に苦情はなかった。食材、 調理場、 調理器具の衛生状態は良かったが、 調理器具(包丁・まな板)の食材ごとの使い分けの認識が十分でなかった。また、 検食の保存がされていなかったため感染経路の特定はできなかった。

今回の事例は、 何らかの原因で食品がナグビブリオに汚染され、 その後常温で長時間放置されたため菌が増殖したものと思われる。

福岡市保健環境研究所
衛藤真理子 藤代敏行 瓜生佳世 真鍋和義 武田 昭
福岡市中央保健福祉センター 宗 三郎

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