月見だんごによる黄色ブドウ球菌食中毒事例−兵庫県

(Vol.24 p 11-12)

2002年9月24日、 兵庫県津名健康福祉事務所管内の医療機関からA保育園児8名を診察した結果、 9月20日夜から嘔吐、 下痢、 腹痛の食中毒症状を呈しているとの通報があった。同健康福祉事務所が調査したところ、 有症者はA保育園の3〜6歳の園児14名で、 症状は嘔吐7名、 下痢7名、 腹痛8名であった。

保育園が冷凍保管していた給食等29件についての健康福祉事務所による検査(9月25日)の結果、 9月20日の給食のうち、 月見だんご(19日製造)から黄色ブドウ球菌が分離され、 さらに、 園児10名(有症5名)、 職員1名の計11名の便から黄色ブドウ球菌が分離された。また、 月見だんごを製造した施設の調査(9月25日)では、 従事者4名の便、 および1名の手指のふきとり検体から黄色ブドウ球菌が分離された。なお、 月見だんごは1名あたり1串がおやつとして提供され、 保育園45名のうち園児34名、 職員6名の計40名が喫食していた。

月見だんご由来1株、 便由来15株、 手指のふきとり由来1株の計17株の分離株について、 エンテロトキシン(SE)型別、 および制限酵素Sma Iを用いたパルスフィ−ルド・ゲル電気泳動(PFGE)パタ−ンの解析を行った。また、 月見だんごについては、 ELISA法、 およびRPLA法によりSEの定量、 および黄色ブドウ球菌の菌数測定を行った。その結果、 月見だんご、 従事者の手指のふきとり1名、 および園児3名(有症1名)の便から分離された5株はSE A型、 コアグラ−ゼVII型で、 PFGEパタ−ンも同一であった()。

月見だんごの餅玉、 あんこ玉のSE量はいずれも2.5〜5ng/g程度であり、 あんこからは検出されなかったので、 1串(餅34〜36g)中のSE量は約85〜180ngであると推定された。また、 餅玉、 あんこ玉の菌数(cfu/g)はそれぞれ6.3×107、 1.6×107であった。

以上の結果から、 本事例は9月20日のおやつとして提供された月見だんごを原因食品とする食中毒と断定され、 製造過程で従事者の手指を介して付着した菌が、 保存中に食中毒を起こす菌量まで増殖し、 喫食した園児が発症したものと推定された。なお、 本事例の潜伏時間は4〜9時間(平均5.8時間)であった。

この事例では園児34名、 職員6名の計40名が喫食しており、 そのなかで園児14名が発症した。SE Aの食中毒発症量は200ngないしそれ以下と推定されているが、 この事例では、 約85〜180ngのSE Aによって園児(3〜6歳児)の41%が食中毒症状を起こした。

兵庫県立健康環境科学研究センター
辻 英高 押部智宏 池野まり子 山本昭夫 増田邦義
兵庫県津名健康福祉事務所
戸塚雅彦 大屋正俊 打越 彰 鶴林 泉
兵庫県洲本健康福祉事務所
瀬合悦子 榎本美貴 藤本享男

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