保育園給食によるSalmonella Newport食中毒事例−和歌山市

(Vol.24 p 65-66)

2002年11月末〜12月にかけて、 和歌山市内の私立保育園において、 給食を原因とするSalmonella Newport食中毒が発生したので、 その概要を報告する。

2002年12月4日、 市内の医療機関から同じ保育園の園児2名が、 11月29日より発熱、 腹痛、 粘血便を訴えて受診したとの第一報が保健所に入った。保育園の欠席状況を調査したところ、 29日の欠席者は少なかったが、 週明けの12月2日には発熱での欠席が増えていた。12月9日には先の園児2名のうち1名と、 別の医療機関を受診した同保育園の園児、 合計7名からSalmonnella O8が検出され、 当所で血清型別の結果、 S . Newportと決定した。

最終的に、 摂食者147名中園児55名が発症したが、 職員は全員無症状であった。発症状況は図1に示したとおりで、 11月29日と30日にピークがあるものの、 その後も終息に日数を要し、 12月16日まで発生が続いた。また、 患者の主症状は、 下痢(91%)、 発熱(60%、 最高40℃)、 腹痛(58%)であった。

最初に、 11月26日〜28日までの保育園給食の冷凍保存検食15検体について、 サルモネラをはじめ食中毒菌7項目を検査したが、 すべて不検出であった。

園児7名からのサルモネラ検出を受けて、 すでに検査した3日分の検食に加えて、 11月25日、 29日および12月2日〜6日までの検食と、 この2週間分の食材、 給食調理施設ふきとり、 園で飼育している小鳥の糞のふきとり、 亀の水槽の水、 保育園職員および園児の検便が搬入され、 サルモネラ検索を実施した。検体数とサルモネラの検査法は表1に示した。

この結果、 11月26日喫食のポテトサラダと、 その材料であるキュウリからS . Newportを検出し、 それぞれの菌数は30MPN以下/100gおよび1.1×106MPN/100gであった。他の検食、 食材、 施設ふきとり、 鳥の糞、 水槽の水はS . Newport不検出であった。

調理従事職員3人中2人(67%)、 保育職員13名中5名(38%)の便からS . Newportが検出された。また、 園児は136名中82名(60%)がS . Newport陽性であったが、 その45%の37名が無症状であった。

保健所の調査によると、 ポテトサラダの調理は、 園児が喫食する2時間前から調理を始め、 全員分を1個の容器で調理した。ジャガイモは前日に茹でて冷まし、 キュウリは喫食当日に包丁でスライス、 塩もみ、 水洗いの後、 素手で絞ってサラダに加え、 約1時間で調理を終えた。喫食までの1時間は涼しい部屋に保管されていた。保存検食は配膳直前に採取しており、 その菌数が30MPN以下/100gであったことから、 摂食者が摂取したS . Newport菌数は平均数個〜十数個とごく少量であると推定され、 このことが発症の遅延を招き、 職員も含めて無症状保菌者が多い原因であると思われた。

図2は、 S . Newportの制限酵素Xba I、 Bln Iによるパルスフィールドゲル電気泳動の結果である。本事例由来の6株はすべて同じ泳動パターンを示した。

また、 BBLセンシディスクによる薬剤感受性試験では、 この6株はいずれもABPC、 CTX、 KM、 GM、 SM、 TC、 CP、 CPFX、 NA、 FOM、 ST、 SIXの12薬剤すべてに感受性であった。

これらの状況より、 本事例はS . Newportに汚染されたキュウリを原材料として調理したポテトサラダによる食中毒であると断定された。なお、 キュウリの汚染原因については不明である。

なお、 検食の初回検査時、 SBG培地で増菌後の分離培養ではサルモネラ不検出であったが、 再検査時には緩衝ペプトン水(以下BPW)で前増菌することによりポテトサラダから検出できた。食品のサルモネラ検査には、 冷凍保存による菌への影響や、 汚染菌量の少ない場合も考慮して、 BPW 前増菌が欠かせないことを痛感した。

最後に、 詳細な資料を提供していただきました和歌山市保健所食品保健室と、 患者株を分与下さいました医療機関の先生方に感謝いたします。

和歌山市衛生研究所・微生物学担当
上野美知 金澤祐子 山下晃司 太田裕元 北口三知世 川上忠明
岩崎恵子 辻澤恵都子 森野吉晴

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