宅配弁当によるウェルシュ菌食中毒事例について−石川県

(Vol.24 p 67-67)

2002年11月、 能登中部保健所管内において、 ウェルシュ菌による大規模な食中毒の発生があったので、 その概要を報告する。

11月19日(火)午前10時、 S町の工事事務所より前日(18日)にM弁当製造業者の昼食弁当を食べた96人が下痢、 腹痛等の食中毒症状を訴えているとの通報が当所にあった。

直ちに調査を行った結果、 S町の工事事務所では複数の弁当製造業者より弁当を購入しているが、 18日(月)にM弁当製造業者の弁当を喫食した者のみが食中毒症状を呈していたことが判明し、 当該業者の弁当を原因とする食中毒と推定し、 調査を開始した。

喫食者714人中患者数は540人(発症率76%)、 主な症状は、 下痢(99%)、 腹痛(79%)で、 表1のとおりであった。また、 潜伏時間は平均約9時間で、 図1のとおりである。

弁当の調理メニュー「鶏肉と竹輪の炒り煮」、 「カリフラワーのチリソース」、 「揚げ餃子」、 「サワラの塩焼」、 「コロッケ」、 「青菜のおひたし」の6品、 食材としての「焼ちくわ」、 「冷凍餃子」、 「生サワラ」、 「カリフラワー」の5品の検食、 およびふきとり10件、 喫食者168人ならびに従業員13人の糞便について検査を実施した。

検査の結果、 弁当喫食者168人中126人(Hobbs 4型9人、 Hobbs 16型117人)、 従業員13人中6人(Hobbs 4型3人、 Hobbs 16型3人)および「鶏肉と竹輪の炒り煮」(Hobbs 16型)、 「カリフラワーのチリソース」(Hobbs 16型)からウェルシュ菌を検出し、 食材およびふきとりからのウェルシュ菌の検出はなかった。また、 ウェルシュ菌以外の食中毒起因菌は分離されなかった。

ウェルシュ菌の分離方法は、 当日の弁当、 食材およびふきとりについては、 クックドミ−ト培地(OXOID製)で増菌培養後、 KM不含卵黄加CW寒天基礎培地(日水製)に接種し嫌気培養を行った。糞便については、 クックドミ−ト培地(OXOID製)に接種し、 100℃、 10分間加熱処理後増菌、 KM含有卵黄加CW寒天基礎培地(日水製)に接種し嫌気培養を行った。

エンテロトキシン産生能検査については、 石川県保健環境センターにおいてウェルシュ菌エンテロトキシン産生遺伝子の検出により確認した。

以上の検査結果から、 本食中毒事件の原因食品はウェルシュ菌に汚染された「鶏肉と竹輪の炒り煮」であると断定した。なお、 「カリフラワーのチリソース」からウェルシュ菌が検出されたのは、 弁当を搬送中に、 「鶏肉と竹輪の炒り煮」の煮汁が混入したことによるものと判断した。

発生要因は「鶏肉と竹輪の炒り煮」を、 深鍋で加熱調理後、 常温で長時間(盛りつけまで18時間)放置したため嫌気的環境になり、 食品中に残存した当該菌が増殖したためと考えられる。

なお、 今回の事例について当該菌の侵入経路については不明であるが、 当該菌による食中毒の再発防止のため、 調理従事者に対して衛生教育および「加熱すれば大丈夫」という間違った考え、 また大量調理の危険性についての指導を行った。

石川県能登中部保健所
橋本喜代一 木場久美子 杉盛耕益 高岡菊江 相川恵子 東田裕之 吉田守孝 佐藤日出夫
石川県保健環境センター
倉本早苗 米澤由美子 芹川俊彦

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