2002/03のインフルエンザ流行期に、 鼻汁からA香港型インフルエンザウイルス(AH3型ウイルス)とエコーウイルス9型が分離され、 髄液からはAH3型ウイルスが2度にわたって分離された無菌性髄膜炎を経験したので報告する。
症例:6歳4カ月の女児。2002(平成14)年12月26日未明から頭痛・嘔吐があり救急病院を受診して点滴を受けた。昼ごろから38℃台の発熱があり、 紹介医を受診して迅速診断キットでflu Aと診断されたが、 嘔気が続くため紹介入院となった。意識障害・髄膜刺激症状はなかったが、 頭痛が強いため腰椎穿刺を行ったところ、 髄液細胞数516/3(多核球/単核球72/28)、 蛋白33mg/dl、 糖55mg/dlであった。2峰性の発熱(5〜6病日)を呈し、 それに伴って頭痛・嘔吐がみられた。細胞数は12病日に945/3となったのをピークに減少し、 3週間の入院で軽快退院した。頭部CT、 脳波に異常はなかった。その後、 2003(平成15)年1月22日から咽頭痛と嘔気、 23日深夜から38.9℃の発熱があり、 迅速診断キットで再びflu A陽性であった。同胞が数日前にインフルエンザに罹患していた。この時の髄液細胞数は26/3単核球)であった。アマンタジンを内服し、 通常の経過で軽快した。
ウイルス分離:12月26日(初発時)の鼻汁からAH3型ウイルスとエコーウイルス9型(E9)とが分離された。初発時および1月6日(12病日)の髄液からはAH3型ウイルスが分離された。1月23日の髄液はウイルス分離陰性であった。
考察:インフルエンザに感染した患者から、 髄液から2度にわたってAH3型ウイルスが分離されることはきわめて稀と考えられる。本症例は初発時、 鼻汁からAH3型ウイルスと同時にE9が分離されている。E9は髄液中からは分離されていないので、 髄膜炎との関連づけはできないが、 2002年秋の無菌性髄膜炎症例からE9が数例分離されており、 本例についてはインフルエンザウイルスと髄膜親和性の高いE9ウイルスとの重複感染が関与した可能性が考えられる。
中野こども病院 圀府寺 美 藤本雅之 村上貴孝 木野 稔
大阪市環境科学研究所 村上 司 入谷展弘 久保英幸 春木孝祐