C群ロタウイルスによる小学校での集団胃腸炎の発生−滋賀県

(Vol.24 p 111-112)

2003年3月に県内1小学校で、 C群ロタウイルスによる集団胃腸炎の発生がみられたので、 その概要について報告する。

3月13日、 県内の1小学校において、 3年生のクラス28名中8名が嘔吐・下痢を訴え、 うち7名が欠席または早退したため、 学校医の指示により、 この日の午後より学級閉鎖が行われた。この小学校の全児童数は183名であり、 各学年は1クラスで構成されている。同日に他の学年で胃腸炎症状を呈していたのは、 1年生3名、 2年生2名、 4年生1名および5年生1名、 全校での合計は15名であった。さらに、 同じ調理施設が給食を提供している他の4校では集団胃腸炎の発生はみられなかったので、 給食を介した食中毒とは考えられなかった。

3月11日〜13日の間に胃腸炎症状を発症した3年生6名、 2年生1名および1年生1名について3月14日に糞便を採取し、 病原体の検索を行った。小学校等の集団では冬季間にノーウォーク様ウイルス(NLV、 norovirus)による集団胃腸炎が多発するため、 当初、 NLVを原因として疑い、 RT-PCR法による検出を試みたが、 すべての検体でウイルスが検出されなかった。そのため、 ラテックス凝集法を用いたキット(第一化学薬品)によるA群ロタウイルス抗原の検出、 およびRPHA法を用いたキット(デンカ生研)によるC群ロタウイルス抗原の検出を行ったところ、 3年生6名中4名および2年生1名中1名の糞便からC群ロタウイルスが検出された。また、 3年生のうち、 C群ロタウイルスが検出されなかった2名中1名からはA群ロタウイルスが検出された()。なお、 細菌学的検査では、 既知病原体は検出されなかった。これらの結果から、 今回の集団胃腸炎は、 C群ロタウイルスを主因とするものであると推察された。

今回病原体検索を行った有症者の症状をに示す。このうち、 C群ロタウイルスが検出された5名の主な臨床症状は、 下痢5名(100%)、 嘔吐・嘔気4名(80%)、 腹痛4名(80%)および発熱3名(60%、 37.0〜38.6℃)であった。また、 下痢の回数は1〜10回、 嘔吐の回数は1〜5回であった。

学級閉鎖が行われた日の前日および前々日は、 卒業式の練習で全校生徒が集まる機会があったが、 3年生だけが特別な行事を行ったことはなく、 ウイルスの感染経路は不明であった。この事例は、 県内で初めてC群ロタウイルスを検出した事例である。4月〜6月にかけてC群ロタウイルスによる集団胃腸炎事例が発生するとの報告(葛谷ら、 感染症学雑誌、 77(2)、 2003)もあり、 今後その動向を明らかにしていく必要があると考える。

滋賀県立衛生環境センター 吉田智子 大内好美 林 賢一
滋賀県今津保健所 阿辻由美 木下美也子 大庭眞佐子

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