滋賀県において、 2003年3月6日採取の検体から、 今シーズン初めてインフルエンザウイルスAH1型が分離されたので報告する。
患者は滋賀県内在住の28歳の男性で、 2003年3月5日に発症し、 発熱(38.6℃)、 上気道炎(咳)、 頭痛、 筋肉痛および関節痛を主訴として感染症発生動向調査インフルエンザ定点を受診した。
発症1病日後の咽頭ぬぐい液を材料とし、 ウイルス分離を行った。MDCK細胞2代継代培養上清についてモルモット赤血球(0.6%)を用いてHA試験ならびに国立感染症研究所より分与された2002/03シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行った。その結果、 抗A/Moscow/13/98(H1N1)血清(ホモ価2,560)、 抗A/Panama/2007/99(H3N2)血清(ホモ価640)、 抗B/Shandong(山東)/7/97血清(ホモ価80)、 抗B/Hiroshima(広島)/23/2001血清(ホモ価320)および抗B/Kagoshima(鹿児島)/11/2002血清(ホモ価1,280)にはいずれもHI価<10であったが、 抗A/New Caledonia/20/99(H1N1)血清(ホモ価640)に対してHI価80を示した。
滋賀県において2003年4月22日現在、 2002/03インフルエンザ流行シーズン(2002年11月1日〜2003年3月31日)中に、 インフルエンザ定点および集団かぜ患者検体計92件を検査したところ、 分離されたインフルエンザウイルスは、 AH3型が32株、 B型が14株、 AH1型が1株であった。
AH1型は、 滋賀県では2000/01シーズン、 2001/02シーズンと2シーズン連続して分離され、 それぞれのシーズンの分離株はA/New Caledonia/20/99(H1N1)とほぼ同様の抗原性を示していた。今回分離されたAH1型株の抗原性は、 HI試験成績からA/New Caledonia/20/99と若干ずれている可能性があることが考えられた。
滋賀県立衛生環境センター
大内好美 川端彰範 吉田智子 林 賢一 辻 元宏
大西クリニック 大西利穂