2002年に日本各地の地方衛生研究所等で分離された腸管出血性大腸菌(EHEC)菌株について、 パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子型別を中心とした解析を行った。国立感染症研究所・細菌第一部に送付され、 解析を行った2002年のO157分離株は 1,588株であった。これらの株のうち、 そのPFGEパターンが2001年に広域流行したPFGEタイプ(Type A, B, C)(本月報Vol.23、 No.6、 139参照)と一致するものが、 散発事例および集団事例由来株において検出された(図)。Type A, B, Cについては、 互いにバンド1本の違いを示すに過ぎない類似したPFGEパターンであり、 ファージ型もすべて33であった。Type Aは調べた株のうち99株(6.2%)あり、 2001年の21%からは減少した。Type Bも13株(0.8%)と減少したが、 Type Cは68株(4.2%)あり、 2001年から増加した。これらのタイプを示す株は全国27都道府県で分離されていた。
8月上旬に栃木県の病院・老人保健施設で発生したO157による集団事例(本月報Vol.23、 No.12、 318参照)では、 患者および原因食品と推定された「香味あえ」から分離されたO157:H7がType Cであった。Type Cを示す株は全国15都道府県で分離されていたが、 上記の株以外はすべて散発事例由来株であった。
全分離株数に占める頻度は減少したものの、 2001年に引き続き同一PFGEタイプを示す株が広域から分離されたことは、 汚染源が広範に存在することを示唆すると考えられるが、 現在までに食材等からの菌分離は報告されていない。
国立感染症研究所・細菌第一部
寺嶋 淳 泉谷秀昌 伊豫田 淳 三戸部治郎 田村和満 渡辺治雄