未殺菌牛乳によるSalmonella Typhimurium感染広域集団事例、 2002〜2003年−米国・イリノイ、 インディアナ、 オハイオおよびテネシー州

(Vol.24 p 192-193)

2002年12月10日、 クラーク郡およびオハイオ州衛生部(ODH)はS . Typhimuriumに感染した入院児童2名の届け出を受けた。初期調査から、 2002年11月27日〜12月13日に地方の複合酪農レストランで調達された未殺菌生乳の摂食が原因と推測された。27州で今なお生乳の販売が許可されており、 生産団体も農場から市民に直接生乳を販売することを許可するよう働きかけていることから、 生乳の危険性についての教育および既存の体制についての慎重な検討が必要である。

当該施設は酪農場、 レストラン、 スナックバー、 ならびにヤギ、 牛、 小羊および豚のふれあい動物園からなる。2002年12月に行われた疫学調査の段階では、 オーナーの家族16名を含め、 211名が働いていた。2002年時点では、 当該施設はオハイオ州で消費者に合法的に生乳、 およびその加工品を販売提供する唯一の場所であった。2001年にはおよそ135万人が訪れた。

2002年11月30日〜2003年2月18日の間にODHは、 S . Typhimurium分離株94株のPFGE解析を行った。このうち、 60が同一のパターンを示した。さらに、 イリノイ、 インディアナおよびテネシー州の菌株のパターンも、 オハイオ州のパターンと一致した。

症例定義は、 2002年11月30日〜2003年2月18日までの間に、 オハイオ州の一酪農場と関連している者のうち、 同一のPFGEパターンを呈するS . Typhimuriumが分離された者とした。合致した症例は合計62例(購買者40例、 購買者の家族6例、 同牧場の酪農従事者16例)、 2002年12月上旬にほとんどが発症し、 4州(インディアナ、 イリノイ、 オハイオ、 テネシー)から報告があった。症例の年齢中央値は18歳(1〜70歳)で、 男女の差は認められなかった。約90%が発熱、 下痢などの症状を呈した。

今回の事例の危険因子を推測するために、 購買者40例を症例、 購買者とともに同じ食事をした56例を対照として、 症例対照研究を行った。その結果、 オハイオ州の一酪農場で販売された未殺菌牛乳のみが、 統計学的に有意な危険因子であると判明した(オッズ比;45.1、 95%CI; 8.8〜311.9)。

食品32検体のうち、 5検体がS . Typhimurium陽性であった(生のスキムミルク3、 生乳から作られたバター1およびクリーム1検体)。それらのPFGEパターンは集団事例のものと一致した。乳牛の糞便31および環境由来23検体は、 S . Typhimurium陰性であった。

従業員の検査から、 家畜舎で働いている4名(無症状)からS . Typhimuriumが分離された。この4名は搾乳、 瓶詰めおよびアイスクリームの製造を行っていた。

2002年12月13日、 当局の指示に従い、 当該施設は生乳製品すべての販売を停止した。2003年1月13日、 オハイオ州農業部は、 瓶詰め、 スキムミルクおよびクリームを含めた生乳製品すべての販売を無期限に停止することを勧告した。手洗いの励行、 ボウルミキサーなどの道具および設備の交換、 清掃の励行など、 家畜舎も含め衛生管理の改善も勧告された。

(CDC、 MMWR、 52、 No.26、 613-615、 2003)

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