国内発生例でのShigella boydii による赤痢は稀であり、 特にS. boydii 14型による事例は1985年以来確認されていない。このような状況の中で長野県において、 同時期に相次いで2例のS. boydii による国内散発事例が確認されたのでその概要を報告する。
事例1 S. boydii 4 型:上田市に居住する女性(70歳)が2003(平成15)年1月21日から下痢症状があり、 23日に医療機関を受診した。細菌検査の結果、 S. boydii 4型が検出された。患者の臨床症状は軽く、 1月27日には症状は認められなくなった。患者は海外渡航歴がなく、 家族等接触者からは赤痢菌は検出されず、 喫食調査等からも感染経路は特定できなかった。ほぼ同時期に東京都でもS. boydii 4型の国内例があった。両菌株の薬剤耐性パターンは一致し、 パルスフィールド・ゲル電気泳動ではバンド1本の相違であったが、 両者の関連性については不明であった。
事例2 S. boydii 14型:飯田市に居住する男児(8歳)が2003年1月21日に発熱、 下痢などの症状で発症した。細菌検査の結果、 1月25日にS. boydii 14型が検出された。患児は事例1と同様に海外渡航歴はなく、 また家族等の接触者からも赤痢菌は検出されず、 喫食調査等からも感染経路は不明であった。
両事例の菌株はともに、 S. boydii の性状を示し、 inv Eおよびipa H遺伝子を保有していた。今回の事例は感染源の特定はできなかったが、 今後これら希少血清型の赤痢菌の動向に注目していきたい。
長野県衛生公害研究所 村松紘一 笠原ひとみ
長野県佐久保健所 関 映子