Shigella flexneri 血清型5aによる感染症例については、 青森県で2002年11月、 八戸市で2名、 三戸郡で1名の感染例が報告されている(IASR Vol.24, No.1, 6参照)。その後、 本県においても、 同じ血清型の赤痢菌が、 2002年12月に九戸郡で2名、 2003年4月に二戸郡で1名から分離されたのでその概要を報告する。
事例1:2002年12月、 九戸郡の夫婦(夫70歳、 妻67歳)が下痢、 腹痛を訴え、 青森県内の医療機関を受診した結果、 それぞれからS. flexneri 5aが分離され、 細菌性赤痢と診断された。青森県八戸保健所に感染症発生届け出がなされ、 その後、 岩手県久慈保健所に連絡があった。
患者には最近の海外渡航歴もなく、 また、 感染源調査として、 残存していた自家製食品(6品目)について検査を実施したが、 当該菌は分離されなかった。
事例2:2003年4月、 二戸郡の69歳の男性が下痢、 腹痛を発症し、 同郡内の医療機関を受診した。S. flexneri 5aが分離され、 細菌性赤痢と診断され、 岩手県二戸保健所に届け出がなされた。
患者には最近の海外渡航歴もなく、 また事例1の患者との接触もなかった。感染源調査として、 家族等の検便(10名)を実施したがすべて陰性であり、 また、 患者宅の井戸水、 残存していた食品(4品目)について検査を実施したが、 当該菌は分離されなかった。また、 喫食調査の結果、 事例1との共通食品も見当たらなかった。
今回、 両事例で分離された菌株について調査したところ、 PCR法でipa H遺伝子およびinv E遺伝子を保有していた。また、 薬剤感受性試験(センシ・ディスク法)において、 12薬剤中6薬剤に耐性を示し、 多剤耐性菌であった(表)。パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)(制限酵素Xba I)では、 同一パターンを示した(図)。以上のことから、 両事例は、 同一由来株に起因するものと思われた。さらに、 青森県環境保健センターの調査において、 本県で発生した事例1の患者分離菌株は、 青森県で発生した3名の患者分離菌株とPFGEによる泳動パターンが同一であるとの報告を受けており、 一連の事例は関連性が疑われる。今後、 S. flexneri 5aによる感染の発生動向に注意するとともに、 感染源、 感染経路等の詳細な解明が必要と思われる。
最後に、 事例1の患者分離菌株を分与いただいた青森県環境保健センターに深謝いたします。
岩手県環境保健研究センター
藤井伸一郎 佐藤直人 高橋朱実 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正 宇佐美 智
岩手県保健福祉部保健衛生課
岩手県久慈保健所
岩手県二戸保健所