手足口病患者からのエンテロウイルス71型の分離−福島県
(Vol.24 p 218-219)

2003年4月末〜5月にかけて手足口病の患者23症例から採取された臨床材料(咽頭・直腸スワブ)のうち、 9症例由来の検体からエンテロウイルス71型(EV71)が検出された。9名中7名は、 いわき市南部地区と北茨城市に居住する1歳〜7歳の小児であるが、 7歳の1名を除き他は5歳以下であった。北茨城市は隣県に位置するが、 7症例が居住する県境を挟む地域は、 以前から人の往来が活発であり、 北茨城市の住民が、 小児科定点であるいわき市南部のK病院を受診したため、 当所に検体が送付された。

9症例の臨床症状は、 本病に特徴的な手掌と足、 それに口腔内の小水疱が主で、 その他に下痢(2名)と上気道炎(1名)がみられた。発熱については、 38℃台の1症例と37℃台の2症例以外は平熱であった。特に重篤な合併症はみられず、 すべて回復している。

9症例由来の臨床材料(咽頭スワブ9、 直腸スワブ1)を細胞に接種したところ、 2代培養終了時点(14日目)までにRD-18S細胞とVero細胞にCPEが認められた。CPEについては、 局所的な出現とそれからの派生的拡大がみられた。3代培養したウイルス液の力価は、 103.5〜105TCID50/25μlの範囲にあった。感染研から分与されたBrCr-A抗血清を用いた中和試験では、 ブレークスルーを示す株もみられたが、 ウイルス増殖阻止の程度においてC7-A抗血清とは差異が認められた。

患者情報によれば、 いわき市では第23週から手足口病が増加しているが、 時期を同じくして茨城県でも患者が増えていることが確認された。9症例の中には兄と妹、 姉妹の2組の家族内感染が疑われるケースがあった。いわき市在住の4症例と北茨城市に居住する3名との間の接点は不明であったが、 いわき市内の1症例については、 北茨城市内の保育所に通っており、 この患者の他に、 同じ保育所の北茨城市に居住する手足口病の患者1名の検体(ウイルス分離陰性)も搬入されていた。また、 同保育所内で手足口病が流行していたという情報も得られた。

7月25日現在で、 6月〜7月に38名の手足口病患者から採取された臨床材料(いわき市南部地区26名、 北茨城市2名、 河東町3名、 郡山市2名、 相馬市2名、 福島市1名、 三春町1名、 伊南村1名)のうち、 17名の検体(いわき市南部14名、 北茨城市1名、 相馬市1名、 福島市1名)からRD-18S細胞とVero細胞にCPEを示すウイルスが分離されてきている。

なお、 昨年、 手足口病の患者から分離されたウイルスは、 A群コクサッキーウイルス16型が主で、 EV71も分離されていたが、 年間で4名(7月郡山市2名、 8月石川町1名、 10月古殿町1名)からのみの分離であった。今年のEV71分離陽性症例は、 昨年同期を上回っていることから、 県内版の感染症週報で関係機関に情報を提供し、 注意を喚起した。

福島県衛生研究所・微生物部ウイルス科
慶野昌明 金成篤子 水澤丈子 亘理智子 三川正秀 渡部啓司 加藤一夫

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