手足口病患者からのエンテロウイルス71型の分離−高知県
(Vol.24 p 221-221)

2003年6月に入り手足口病患者からエンテロウイルス71型(EV71型)が散発的に分離されたが、7月以降は同型ウイルスの分離が目立つようになった。6月から7月にかけて検査定点から24名の手足口病患者検体が搬入され、13名からEV71型が、無菌性髄膜炎の1名、その他の症状2名から同型ウイルスが分離同定されている。

EV71型が分離された16名の患者を年齢別にみると、1歳5名、2歳3名、3歳1名、4歳1名、5歳4名、7歳2名であり、性差は男10名、女6名であった。患者が5歳以下に集中していることと性差は今年同型ウイルスの流行がみられている香川県と同様の傾向であった。

ウイルス分離にはLLC-MK細胞、Vero細胞、RD-18S細胞、HeLa細胞およびFL細胞を用いたが、LLC-MK細胞、Vero細胞に最も感受性を示した。CPEはVero細胞で3,4日で観察され、LLC-MK細胞ではやや遅れて観察された。中和試験は、国立感染症研究所から分与されたEV71型の中和血清では同定できず、愛媛県立衛生環境研究所から分与された血清を用いて行った。

臨床症状については、1検査定点における9症例についてまとめた。手足の小水疱は全例にみられたが、口腔内のアフタ性病変は、認められないものも1例あった。発熱は9例中7例にみられたが、6例は38℃台、1例は39.6℃に達した。有熱期間はほとんどが2〜3日で、1例のみ7日であった。2例に嘔吐、1例に下痢を伴っていた。注目すべきは、この流行中に、無菌性髄膜炎と診断されEV71型が分離されながら、手足口病の症状がみられなかった症例が1例存在したことである。

今シーズン県下における手足口病の定点当たり報告数は、第23週〜第27週は0.77人〜1.16人の間で、第28週〜第31週は1.29人〜2.16人の間で推移している。8月に入っても検体が搬入されており、また、近年県下ではEV71型の流行はみられておらず、過去の流行状況から推測すると、ある程度の規模の流行が考えられる。今後の動向に注目したい。

高知県衛生研究所
永安聖二 千屋誠造 刈谷陽子 小松照子 大野賢次 上岡英和
はまだ小児科 浜田義文

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