エンテロウイルス71型による手足口病の流行−広島県
(Vol.24 p 220-220)

感染症発生動向調査事業の報告患者数をみると、 広島県における手足口病の定点当たりの患者数は、 2003年5月第3週(第20週)から増加し、 6月第4週(第25週)以後に急増した。7月第2週(第28週)には定点当たり患者数が24.12人となり、 例年の6倍以上の患者数のピークを迎えた。その後の患者数は減少しているが、 8月12日現在も完全な流行の終息には至っていない()。

本年最初のエンテロウイルス71型(EV71)の分離例は、 5月17日(第20週)に検体採取された手足口病患者からで、 現在のところ、 手足口病患者63名に由来する検体75件(咽頭ぬぐい液、 髄液など)から29株のEV71が分離されている()(分離陽性患者数は26名)。患者63名の年齢は0歳〜8歳までに分布し、 そのうちの57名(90%)が1歳〜5歳の幼児であった。なお、 今回流行している手足口病では、 例年に比べて無菌性髄膜炎を併発する症例が多く見られ、 患者63名中の14名が髄膜炎症状を呈していた。髄膜炎症状を呈した患者の内訳は1歳が1名、 2歳が3名、 3歳と4歳が各1名、 5歳が5名、 6歳、 7歳、 8歳が各1名で、 このうちの5名からEV71が分離された。また、 脳炎が疑われた患者(1歳)も1名認めたが、 EV71は分離されなかった。なお、 手足口病以外に発疹症、 口内炎、 上気道炎、 気管支炎の患者計5名からも、 EV71が分離されている。

ウイルスの分離にはRD-18S、 Vero、 FL、 HEp-2、 BGM細胞を使用したが、 EV71が分離されたのはすべてVero細胞であった。ウイルスの同定は、 感染研分与の抗血清(抗BrCr、 抗C7/Osaka97、 抗1095Shiga97)と、 広島県で1978年に分離されたEV71株を用いて作製した抗血清(抗78-0345)を使用し、 マイクロ中和法で実施した。すべてのEV71株は抗78-0345血清によりCPEの出現が強く抑制されたが、 抗1095Shiga97血清ではほとんど抑制されず、 抗BrCr、 抗C7/Osaka97血清では全く抑制されなかった。

手足口病の主な原因ウイルスはEV71とA群コクサッキーウイルス16型(CA16)であるが、 現在までのところ分離されたCA16は、 6月の手足口病と咽頭炎の患者各1名からのみである。本県における今回の大規模な手足口病の流行は、 EV71に起因するものと考えられる。

広島県保健環境センター・微生物第二部
島津幸枝 高尾信一 福田伸治 桑山 勝 宮崎佳都夫

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