ミオクロニー様の動きを伴う手足口病患者からのエンテロウイルス71型の検出−大阪市
(Vol.24 p 219-219)

2003年7月、 大阪市感染症サーベイランス検査において、 ミオクロニー様の動きを伴う手足口病患者(4歳8カ月)の咽頭ぬぐい液からエンテロウイルス71型(EV71)を検出したので報告する。

現病歴:6月30日、 手掌・足底・臀部の発疹と38.5℃の発熱があり近医にて手足口病と診断。翌日も解熱せず嘔吐も出現。7月2日、 一点凝視を頻回に認め、 発熱、 嘔吐も改善ないため、 大阪市立総合医療センターへ入院。

入院時現症:意識清明。後部硬直あり。座位は安定しているが、 歩行時はふらつきあり。指鼻試験は揺れがあり、 しゃべり方は突発的であった。

検査結果:<髄液>細胞数212(単球55%、 多核球45%)、 蛋白19mg/dl、 糖98mg/dl。<血液>WBC 15,170/mm3、 RBC 5.13×106/mm3、 PLT 20.0×104/mm3、 CRP 0.16g/dl、 AST 36IU/l、 ALT 9IU/l、 LDH 517IU/l、 CPK 164IU/l、 TP 7.6g/dl、 フェリチン 60ng/ml。その他異常所見なし。頭部CT;特記すべき異常なし。

入院後経過:無菌性髄膜炎で嘔吐もあるので輸液のみ施行。入院中も失調様歩行・断綴的発語等の小脳症状とミオクロニー様の動きあり。小脳−脳幹脳炎(Rhombencephalitis)の合併も考え、 7月9日、 頭部MRI施行するも異常所見なし。7月2日の脳波では全般的にδ波が混在していた。神経症状は経過観察のみで徐々に改善し、 麻痺など残さず退院した。

ウイルス分離:Vero細胞、 RD-18S細胞を用いてウイルス分離を試みた結果、 Vero細胞にのみエンテロウイルス様の細胞変性効果を示した。抗EVプール血清(エンテロウイルスNT試薬「生研」およびEP95)、 抗A群コクサッキーウイルス16型、 抗EV71/BrCrおよび抗EV71/C7血清(国立感染研より分与)を用いてウイルス中和試験を行ったが、 いずれも中和不成立であった。一方、 奈良県保健環境研究センターより分与された抗EV71血清では、 中和が成立した。

また、 6月には、 39℃の発熱を伴う感染性胃腸炎患者の糞便検体から、 同様の手法を用いてEV71を分離した。系統解析を行う目的で、 Vero細胞の培養上清からウイルスRNAを抽出後、 3種のプライマー(EVP2、 EVP4およびOL68-1)を用いてVP4をコードする遺伝子についてRT-PCRを行った後、 ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。その結果、 上述の手足口病患者由来と感染性胃腸炎患者由来のEV71のVP4領域の塩基配列は、 100%一致することが判明した。

大阪市立環境科学研究所
改田 厚 入谷展弘 久保英幸 村上 司 春木孝祐
大阪市立総合医療センター
上田博章 九鬼一郎 天羽清子 外川正生 塩見正司

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