保育園における腸管出血性大腸菌O157集団感染事例−岐阜県

(Vol.24 p 298-298)

2003年5〜6月、 岐阜県の飛騨地域の保育園において、 腸管出血性大腸菌O157による43名の集団感染が発生したので、 その概要を報告する。

2003年5月29日、 飛騨地域の医療機関からO157感染症患者1名の発生届けが飛騨地域保健所にあった。患者は2歳の幼児で5月24日に軟便、 25日に粘血便の症状があリ、 同日医療機関を受診していた。保健所では患者が通園する保育園の園児(148名)、 職員(18名)、 園児の家族等(134名)の検便および健康調査、 また保育園の調理室等のふきとり検査(9検体)および検食の検査(8検体)を実施した。また環境調査として、 保育園内の鳥小屋、 砂場、 遊具、 保育園周辺で園児が使っていた畑の土、 堆肥等(8検体)についても検査を行った。その結果6月18日までに、 園児26名、 保育士1名および園児の家族等15名,計42名からO157が検出された()。ふきとり検体、 検食および環境からはO157は検出されなかった。初発患者を含めた菌陽性者43名のうち有症者は11名で、 粘血便がみられた初発患者以外は、 比較的軽度な下痢、 腹痛、 軟便等の症状であった。有症者は低年齢児童に多く、 8歳以上の菌陽性者に有症者はいなかった。

検出された43株はすべてO157:H-(VT1&2)であった。また、 PCRによりeaeA およびhlyA 遺伝子の保有が確認された。制限酵素Xba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)の成績では、 43株すべての泳動パターンが一致し、 同一の感染源に由来した集団発生であったと考えられた。一方、 同地域では5月中旬から大学の学生寮において、 O157:H7(VT2)による15名の集団感染が発生していたが、 本事例の分離株とはH抗原、 毒素型およびPFGEの泳動パターンが異なっていたため関連性はないと考えられた。

保健所では感染防止対策として、 施設の消毒、 給食の自粛指導、 および職員に対する衛生指導等を行った。特に、 同地域ではO157の集団感染が連続して発生したため、 感染者の発生報道が連日のように続き、 住民の間に不安が広がっていた。このため自治体との協力により、 感染症予防に関する啓発チラシを作成し、 新聞とじ込み等により住民に配布した。また、 県内の関係機関との連携に務め、 保育所への通知等により感染予防および衛生管理の徹底を図った。

本事例は、 感染者のほとんどが保育園児およびその兄弟の低年齢児童であったが、 多くが無症状保菌者となり、 また有症者の症状も軽度であった。従って、 初発患者が届けられた時点で、 すでに多くの二次感染が発生していたと考えられた。このため本事例の初発患者はA組の園児であったが、 感染の発端は、 組別での菌陽性者率が高かったD組が疑われた()。菌陽性者率は組別に大きな差があり、 B組およびC組の園児からは菌は検出されなかった。またD組に次いで菌陽性者率が高かったF組には、 初発患者(A組)の兄が在籍し、 無症状保菌者となっていた。このため本事例は、 園内における接触感染以外に、 家族内(兄弟)感染を介して他のクラスへ感染が拡大し、 さらに多くの感染者が発生したと推測された。保健所では本事例の感染源調査として、 D組を中心とした園児、 職員の行動調査、 およびそれに基づく環境調査等を行ったが、 ふきとり検体や環境からは菌は検出されず、 感染源を特定することはできなかった。

岐阜県保健環境研究所 白木 豊 板垣道代 山田万希子 所 光男
岐阜県飛騨地域保健所 高野裕光 圓田辰吉 小林香夫 出口一樹

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