大阪府において2003年に発生した無菌性髄膜炎のうち、 2名の患者からエコーウイルス27型(E27)が検出されたのでその概要について報告する。
1例目の患者(15-393)は3カ月齢の男児で、 8月2日〜3日にかけて嘔吐を5回繰り返した。5日に体温が39℃に上昇し、 無菌性髄膜炎、 気管支炎の診断名で入院した。入院時、 全身に小丘疹が多数見られた。9日になり、 体幹の発疹は消失し、 下肢にうすく小丘疹が残るのみとなった。喘鳴は軽度残っていたが、 ミルクの飲みも改善しており退院となった。
ウイルス分離は5日採取の髄液および6日採取の便から、 RD-18SおよびVero細胞を用いて実施したところ、 いずれの検体からもRD-18Sでウイルスが分離された。また同時に実施したVP1領域のRT-PCR(プライマー012、 040および011)によっても材料から遺伝子が検出された。分離されたウイルスはダイレクトシーケンスを行い、 NCBI BLASTで相同性の検索を行い、 型同定を行った。15-393株はVP1領域の塩基配列ではE27標準株(Bacon株)と最も類似しており、 82%のホモロジーを示した。次いでE30とは75%であった。またアミノ酸配列はBacon株と97%と高い相同性を示し、 抗原性がよく保存されていると推測された。他のウイルスとはE18が最も相同性が高く71%であった。
2例目の患者(15-413)は8歳の男児で、 8月9日〜12日まで頭痛が持続、 また毎日1〜2回嘔吐を繰り返し、 13日に無菌性髄膜炎の疑いで入院した。15日になり髄膜炎の症状は軽減したが、 左背部に帯状疱疹が出現したため18日まで入院措置が続いた。
13日採取の髄液からウイルス分離を行ったが、 分離されなかった。しかしRT-PCRによりウイルス陽性となった。15-393と15-413の遺伝子配列は99%一致し、 この事例もE27による無菌性髄膜炎と推測された。
大阪府ではE27の検出は初めてであり、 国内では10年ぶりの検出である。
大阪府立公衆衛生研究所 | 山崎謙治 | 左近直美 | 宮川広実 | 大竹 徹 |
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