無菌性髄膜炎、 手足口病からのCA14の分離−島根県
(Vol.24 p 295-295)

ヘルパンギーナ、 手足口病、 咽頭炎などの病原ウイルスとなるA群コクサッキーウイルスの中でも分離例の稀な14型ウイルス(CA14)を分離したのでその概要を報告する。

CA14が分離されたのは2003年6月〜8月に無菌性髄膜炎、 手足口病、 感染性胃腸炎の患者から採取された咽頭ぬぐい液および糞便である()。ウイルス分離は培養細胞(AG-1、 RD、 FL、 Vero、 HEL)と哺乳マウスを用いて行ったが、 Vero細胞と哺乳マウスで分離された。同定には当所で1985年に分離したウイルスで作製した抗CA14モルモット血清(40単位)を使用し、 Vero細胞上でのプラック形成阻止法で行った。また、 分離陰性の髄膜炎症例について行ったエンテロウイルスの5'NCR-VP2領域およびVP1領域を標的とするRT-PCRで1例(No.5)にCA14遺伝子を検出した。

No.4とNo.7の分離株、 およびNo.5のPCR産物について行った遺伝子解析の結果、 3つの株は5'NCR-VP2領域およびVP1領域とも99%以上一致した。なお、 NCBI BLASTを利用した相同性検索を行うと、 5'NCR-VP2領域ではCA14標準株(G-14)とCA5に85%程度の相同性が認められたが、 VP1領域では286baseのうち分離株に対して92〜94%、 標準株に対して85%の相同性を示し、 同定が可能であった。

我々は1985年に3例の手足口病患者(水疱を含む)、 1991年に4例の咽頭炎患者からCA14を分離しており(飯塚節子、 板垣朝夫、 五明田斈:臨床とウイルス、 22、 308-313、 1994)、 今回は12年ぶりの分離例であり、 髄膜炎例を認めている点で興味がもたれる。

島根県では本年、 エンテロウイルス71型(EV71)による手足口病、 無菌性髄膜炎が流行しており(IASR Vol.24、 No.9、 219-220参照)、 CA14はEV71とともにこれらの疾患の原因となっていると考えられる。また、 今回のCA14が分離された手足口病例は1985年に比べ、 手足および臀部はバラ疹・丘疹であり、 口腔内以外では典型的な水疱が形成されない、 いわゆる不全型であった。EV71が分離された症例でもこのような例が多数認められており、 CA14に特徴的な症状かどうかは不明である。

島根県保健環境科学研究所 飯塚節子 田原研司 糸川浩司 川向明美 板垣朝夫

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