2003年3〜7月、中国・北京におけるSARS可能性例は2,521名に上った。流行をコントロールするために中国保健当局はSARS患者の隔離、医療従事者のPPE使用、SARS患者と接触した者の隔離などの対応を取った。北京では約30,000名の市民が自宅などで隔離された。このたび中国CDCのFETPは、将来的なSARS再興に備えて、北京市海淀区における接触者の中でのSARS発症にかかわる危険因子を調査したので報告する。
海淀区では2003年3月1日〜5月23日までの間に、合計5,186名が接触者として隔離された。5月26日〜6月4日の期間に、1,210名(23%)が調査対象とされ、1,028名(85%)から回答を得た。その結果、接触者として隔離されていた者のなかで232名(2.3%)がSARS可能性例に至っていた。隔離された期間の中央値は14日間(1〜28日)であった。明らかにSARSと診断された患者との接触歴があったグループ(隔離症例の62%)だけから、隔離期間中にSARSを発症した症例が確認された(発症率3.8%)。SARS可能性例と接触したと分かっている 626名(62%)の中で、SARSの活動的症状を呈している患者のケアにあたったグループの発症率(31%)が最も高かった。それに対して、SARSの症状を呈する前(潜伏期)に接触した者で発症した者はみられなかった。加えて、接触者として隔離されていた者からの二次感染も認められなかった。今回の調査は、今後のSARS再興時の接触者隔離の効率を大幅に改善するものと思われる。
(CDC, MMWR, 52, No.43, 1037-1040, 2003)