輸血を介すると思われる熱帯熱マラリア感染の1例、2003年−米国・テキサス州


(Vol.24 p 330-331)

輸血を介したマラリア感染はアメリカ国内ではまれで、0.3/100万例以下である。1990〜1998年には合計12例が報告されている。2003年3月、テキサス州ヒューストンから、赤血球輸血によると思われる熱帯熱マラリア感染症例(69歳、糖尿病性腎症と高血圧の既往)が報告された。

ヒューストン保健局の疫学者が、患者の日常生活において危険因子となるものに関して調査したが、患者は退職後、ほとんど屋内で生活しており、海外渡航歴もなかった。テキサスの保健局とCDCは協力して、血液センターを通してこの患者に輸血された血液の提供者の追跡調査を行った。提供者は、一人が47歳のアメリカ生まれ、テキサス在住の女性で、海外渡航歴は認められなかった。もう一人はガーナ人の18歳の男性で、2003年3月の献血時の聞き取り調査では2年前にアメリカに移住し、1度もマラリアにかかったことはないと答えていた。さらなる調査でこの青年は、2002年の5月にアメリカに移住してきていたことが分かった。さらに、この1年間は健康であると答えていたものの、彼の母親によると、2年半前(2000年後半)にガーナでマラリアの治療を受けていることが判明した。

実際、輸血された血液は残っていなかったが、二人の提供者に関して献血から4〜5週間後であったが、血液スメアとPCR、血清抗体価測定(IFA)が実施された。アメリカ人女性の方はいずれの検査も陰性であった。ガーナ人青年はスメアとPCRでは所見はなかったが、血清抗体価の上昇(熱帯熱マラリア原虫に対して1: 256)が見られた。

以下に、輸血によりマラリアを感染させうる血液提供者を除くための、FDA とAmerican Association of Blood Banksが提唱するガイドラインを示す。1963〜1999年まで、輸血に関連するマラリア感染は93例起きているが、このガイドラインにしたがってスクリーニングされていれば、そのうちの2/3は防ぐことができた可能性がある。

・非マラリア流行地に居住する者で、マラリア流行地に行ったことのある者は、帰国後1年間マラリアの症状がない場合に血液提供者となりうる。

・マラリア流行地から移住してきた、あるいはマラリア流行地からの訪問者は、そこを離れて3年間マラリアの症状がない場合に血液提供者となりうる。以前にマラリア流行地に居住し、現在米国に居住する者がマラリア流行地を訪ねた場合には、最も最近の訪問から3年経って提供者となりうる。

・以前にマラリアと診断されたことがある者は、症状がなくなってから3年間は血液提供者となれない。

(CDC, MMWR, 52, No.44, 1075-1076, 2003)

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