2保育園におけるノロウイルス感染による胃腸炎集団発生−青森県
(Vol.24 p 322-323)

2003年10月15日に141名(職員19名)中49名、23日には90名(職員16名)中44名と、立て続けに2カ所の保育園で嘔吐、発熱症状を伴う食中毒疑い集団発生があり、複数の発症者からノロウイルスが検出されたのでその概要について報告する。

2003年10月16日に、嘔吐、発熱を主症状とする食中毒様症状を呈したT保育園児2名が弘前市内の医療機関に受診した旨、診察医師から弘前保健所に通報があった。保健所では食中毒と感染症の両面から調査を行い、同日13名の発症者が確認され、17日には20名、19日2名、20日11名、22日3名で、それ以降の発症者はみられなかった。主症状は、嘔吐、腹痛、下痢、発熱(37〜38.3℃)を伴い、年齢別では4歳(19名)、5歳(12名)、3歳(7名)、2歳(6名)、1歳(4名)、0歳(1名)の順で、職員の感染者はみられなかった。

16日〜18日にかけ搬入された検体のPCRによる検査結果は、発症者便11検体中9検体からノロウイルスが検出され、電子顕微鏡(以下EM)ではカリシウイルス様粒子が2検体で確認された。また、吐物7検体、調理従事者便3検体、調理室のまな板、包丁等のふきとり(11検体)および検食6日分(24検体)は、すべて陰性であった。

続いて24日には、弘前市近郊の医療機関に嘔吐、吐き気、腹痛症状を呈したK保育園児10名が受診したとの連絡を診察医師より受け、同保健所では調査を行い、24日の状況は園児74名中35名、職員16名中2名が欠席し、28日には発症者が90名中44名(職員2名)に達し、うち園児3名の入院が確認されたが、それ以降の発症者はみられなかった。主症状は、嘔吐、吐き気、下痢、発熱(37〜39.2℃)であった。年齢別では3〜4歳(18名)、5歳(11名)、1〜2歳(9名)、0歳(4名)の順で、職員では23歳、32歳であった。

24〜26日までに搬入された検体の検査結果は、発症者便10検体(保育士2名)中PCRにより9検体からノロウイルスが検出され、EMでは2検体でカリシウイルス様粒子が確認された。調理従事者便1検体ではPCRおよびEMとも陰性であった。吐物2検体中PCRにより1検体が陽性であった。検食2日分(7検体)、調理室の調理台等のふきとり(20検体)では、すべて陰性であった。

2事例の集団発生は細菌学的検査ではすべて陰性で、疫学調査と検査結果から食中毒ではなく、ノロウイルスによる感染性胃腸炎と断定されたが、感染源および感染経路については不明であった。

一方、感染症発生動向調査では、弘前保健所管内において第41週(10月6日〜12日)感染性胃腸炎患者報告数が増加傾向を示し、10月20日採取散発便2検体中1検体、また、11月6日採取散発便3検体中2検体からノロウイルスが検出された。

集団2事例および散発事例からの検出ノロウイルスは、すべてGenogroupIIで同一ウイルスと考えられ、さらに詳細な解析をすすめているところである。

青森県環境保健センター 三上稔之 石川和子 小笠原和彦 阿部幸一

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