Vibrio cholerae O8感染事例−福岡県

(Vol.25 p 10-10)

2003年8月29日、所轄保健福祉環境事務所からコレラO1血清に凝集せず、O139にわずかに凝集が認められるVibrio cholerae が検出されたのでコレラ毒素の確認をして欲しい旨の連絡があった。

送付された菌株の生化学性状は表1に示すとおりであり、V. cholerae であることが同定された。しかし、当該菌は市販のコレラ菌免疫血清(デンカ生研)による凝集検査ではO1混合血清に凝集せず、O139にもほとんど凝集が認められなかった。一方、当該菌はPCRによりコレラ毒素(CT)遺伝子保有株であることが確認されたので、国立感染症研究所にO群血清型別を依頼し、その結果当該株はO8であり、ヘモリジン活性保有株でエルトール型であることが判明した。

患者は福岡県A郡在住で、1964(昭和39)年に胃の部分切除を行っている78歳男性であった。2003年8月21日頃より下痢ないし軟便(2〜3回/日)を呈していたが、軽症であったため、医療機関を受診していなかった。しかし、8月26日から発熱(38.5℃)を伴うようになり医療機関を受診し、同日検便を行った結果、8月28日当該菌が検出された。医療機関で点滴とホスホマイシンが投与され、8月28日時点では熱も下がり、下痢も見られなかった。患者は渡航歴がなく、食事は外食などなく家庭で調理したものを喫食していた。患者家族5名に同一症状を呈したものはなかった。

血清型O1およびO139で、CT産生性V. cholerae の感染症は、2類感染症のコレラとなる。しかし、O1およびO139に凝集しないV. cholerae は、CT産生性遺伝子保有であっても2類感染症ではなく、4類感染症の感染性胃腸炎および食中毒菌として取り扱われる。山井ら1)はO1およびO139非凝集V. cholerae についてO群血清型別を行い、血清型O8は1,898株中72株(3.8%)であると報告している。また、1,898株中37株(1.9%)がCT産生株であり、血清型O8は72株中2株(2.8%)がCT産生株であった。

今後、腸管出血性大腸菌と同様に、CT産生性あるいは遺伝子保有のV. cholerae を2類感染症として扱うべく検討が必要であると考えられる。

 文 献
1)山井志朗,他, 感染症誌 71: 1037-1045,1997

福岡県保健環境研究所
堀川和美 村上光一 長野英俊 濱崎光宏 石黒靖尚
国立感染症研究所 荒川英二 渡邉治雄
久留米臨床検査センター 近藤正治 森田 繁 原 一美
えさき小児科・内科医院 江崎泰之

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