2003年7月14日10時30分、関保健所に来所したA市、B保育園(園児144名、職員26名)の園長より、園児からサルモネラが検出された旨、報告を受けた。B保育園では、発熱、下痢等の症状により、7月7日〜14日の間に12人〜25人の園児が欠席しており、そのうちの3名からサルモネラO7群が検出されていた。
保健所において調査を行ったところ、欠席者の症状に、風邪様症状等のばらつきがあったため、下痢が認められない者、7月1日以前および7月9日以降に発症した者を除外した。その結果、有症者33名のうち、18名が発熱、下痢を主体とした食中毒様症状を示し、14名が医療機関を受診、3名が入院していることが判明した。主な症状は、発熱(94%、平均38.9℃)、下痢(89%)、腹痛(28%)、倦怠感(22%)等であった。発病日は、7月5日〜9日の5日間に及んでいた。
その後の検査で、患者5名の便からサルモネラO7群を検出した。患者の共通食が、園の給食およびおやつ以外にないことから、本事例をB保育園を原因施設とするサルモネラ食中毒と断定した。
汚染源究明のために行った細菌検査(検食19件、調理従事者便3件、施設のふきとり5件)では、食中毒菌は検出されなかった。摂食調査結果の統計処理(オッズ比、χ2検定)では、延長保育を受けていた園児に提供された夕方のおやつ4品目(マカロニグラタン、アーモンドラスク、フルーツ白玉、チョコバナナプリン)に有意差が認められた。しかし、これら4品目すべてを摂食していない患者がおり、原因食品の特定には至らなかった。
最終的な分離菌は患者由来8株であり、血清型別によりSalmonella Virchowと型別された。S . Virchowは、本県のサルモネラ症発生動向調査(2000年4月開始)で、2001年に2株(散発下痢症患者由来)、2002年に1株(散発下痢症患者由来)、2003年に1株(鶏肉由来)検出されている。そこで、本食中毒の汚染源解明の一助とするため、それら分離株のパルスフィールド・ゲル電気泳動による比較を行った。
制限酵素Xba IおよびBln Iによる切断パターンを比較したところ、本事例由来8株は、すべて同一のパターンを示すことを確認した。しかし、下痢症患者由来株および鶏肉由来株とは、すべて異なったパターンを示した(図)。
今回の食中毒事例では、食品等からは原因菌が分離されず、汚染源の特定には至らなかった。
岐阜県保健環境研究所
板垣道代 白木 豊 山田万希子 所 光男
岐阜県関保健所