麻疹流行地域における小中学生のワクチン接種状況と流行時の感受性者対策、2003年5月−宮崎県

(Vol.25 p 12-13)

宮崎県では2002〜2003年にかけて地域的な麻疹の流行がみられ(本月報Vol.24、191-192参照)、2002年11月以降、都城市とその周辺地域を中心とした麻疹の流行が発生し、2003年2月に都城市の高校などで集団発生がおこった。この流行を把握するため、2003年3月から患者の全数把握を開始し、さらに、関係市町および教育委員会、医師会、県が主体となり小学生および中学生の感受性者を対象とした麻疹ワクチン緊急接種を実施したのでその概要を報告する。

全数把握については、医師会の協力を得て、2003年3月から都城・北諸県郡地域(都城保健所管内)のすべての医療機関を対象に実施した。流行の終息した7月までの患者報告数は395例で(参照)、3月133人、4月152人、5月74人、6月36人であった。患者のワクチン接種歴は、有り86人(22%)、無し255人(65%)、不明54人(14%)であった。患者の年齢分布は、0〜6歳の乳幼児125人(32%)、7〜18歳の小中高校生 218人(55%)、19歳以上の大人47人(12%)、不明5人(1.3%)であった。3月中旬頃までは小中高校生の患者が多かったが、3月下旬以降0〜6歳の乳幼児の患者が増加し、低年齢層への流行拡大がみられた。また、患者の地域分布は、都城市226人(171.0人/100,000人口)、三股町71人(291.6)、山之口町13人(179.8)、高城町32人(259.3)、高崎町8人(70.9)、山田町11人(129.0)であった。

患者の全数把握と並行してワクチン接種の勧奨を行ってきたが、開始後2カ月を経ても麻疹流行が続いたため、2003年5月に国立感染症研究所の感染症情報センターと実地疫学専門家養成コース(FETP)の協力のもと、都城・北諸県郡地域の小中学生を対象に、緊急接種のための感受性者調査を実施した。調査は、接種歴と罹患歴の有無について、アンケートまたは予防接種台帳および健康管理記録を用いて実施した。このうちアンケートについては、5月14日〜6月1日までの間に各市町が学校を通じて実施し、調査対象者は当該地域にある公立小中学校(65校)に通う学童と生徒(19,577人)で、18,808人から調査票が回収された(回収率96%)。ワクチン接種歴のある生徒は15,610人(接種率83%)、ワクチン未接種で既往歴のある生徒は 1,987人(11%)、接種歴と罹患歴のない推定感受性者は1,090人(5.8%)、情報の不明な生徒は121人(0.6%)(調査後に接種の確認された生徒は除く)であった。接種率を地域別でみると、都城市83%、三股町82%、山之口町83%、高城町87%、高崎町92%、山田町77%であった。

各市町は、5月18日〜6月27日までの間に、感受性者と不明者(接種対象者1,206人)のうち、接種を希望した1,017人(84%)が、学校や保健センターにおいて、定期外ではあるが公費でワクチンを接種し、接種者からの副反応の報告はなかった。

都城・北諸県郡地域では、6月29日発症の症例を最後に新たな発生はみられず、当該地域での麻疹流行は終息した。現在、報告された症例の臨床経過等について調査中である。なお、死亡例は報告されていない。

宮崎県では、今回初めて麻疹患者の全数把握や感受性者調査、および市町村による定期外の公費接種を実施した。調査により接種率が90%を超えた高崎町では他地域と比較して低い患者発生となったので、接種率を高め維持してくことは麻疹対策において重要であることがわかった。また、流行時の接種体制として、教育委員会の協力により学校などで約8割の対象者に接種できたことは、有効な方法であったと考えられる。これらの調査や対策は、地域における麻疹流行終息に大きく寄与したとともに、保護者や教育関係者へ麻疹ワクチン接種の意義を認識させた。しかし、この試みは県内で初めてであったため、患者発生状況の還元方法、保護者への説明および関連機関との連絡調整方法など、改善すべき課題があった。

現在、宮崎県では麻疹の流行を阻止するため、麻疹患者の全数把握と、1歳代および小学校入学前における麻疹ワクチン接種率の調査を実施しており、こうした対策は、ワクチン接種の適切な勧奨と、効果的な啓発活動に有用であると思われる。また、麻疹の発生を探知した際には、患者の全数把握や情報還元をより迅速に実施するとともに、関連機関との緊密な連絡体制を構築していくことが最も重要である。

宮崎県衛生環境研究所 岩城詩子 山本正悟 斎藤信弘 鈴木 泉
宮崎県福祉保健部保健薬務課 坂田和宏 瀧口俊一 日高良雄
宮崎県都城保健所 瀬尾のり江 進藤義博 高橋明子 杉本隆史

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