クイーンズランド州の北部では、国内感染によるデング熱患者発生の頻度が顕著に増加している。本報告では、2002年のこの地域におけるデング熱の発生状況について記載した。
Kurandaにおけるデングウイルス2型患者の発生:2002年3月上旬、Kuranda在住の成人男性が、また中旬には同在住の成人女性が、いずれもEIAによりデング陽性との届け出があった。両者ともKurandaから外部への旅行歴はなかったが、女性患者はデング熱様症状を有しており、彼女が働いている地元のホテルには同様の症状を有している従業員が他にも数人いた。調査の結果、合計で21例がデング熱と確定し、そのうちの3例からデングウイルス2型が同定された。21例中18例はホテルの従業員または宿泊客(8例)、ホテル付近に勤務または在住(10例)のいずれかであった。
デングウイルスE遺伝子の分子生物学的解析では、タイから輸入されたデングウイルス2型に類似していた。
Townsvilleにおけるデングウイルス1型患者の発生:2002年4月中旬、Townsvilleから約40km南に在住する成人男性がEIA によりデング陽性との届け出があった。患者には最近の海外またはKurandaへの旅行歴はなかったが、ウイルスへの推定曝露期間中に、単独でTownsvilleのRailway Estateを日帰りで訪れていた。1週間後、HIテストによりデング熱と確定し、デングウイルス1型によるものと判明した。調査により、Railway Estateに住む成人女性が4月上旬に発疹を伴なう軽度の熱性疾患を有していたことが明らかとなり、後に彼女はデング熱と確定された。
その後デング熱患者の発生はなく、デング1型患者の発生源は不明のままとなった。PCR産物やデングウイルスは得られなかったため、分子生物学的解析は行えなかった。
Cairnsにおけるデングウイルス4型患者の発生:2002年5月中旬、Cairnsの北部郊外にあるSmithfieldに住む成人女性の血清から、PCRとウイルス分離の両方によりデングウイルス4型が同定されたとの届け出があった。患者はデング様症状を有しており、最近のCairnsから外部への旅行歴はなかった。しかし、彼女の発症以前に、彼女のパートナーの男性がインドネシアから帰国後、同様な症状を有していたことが判明した。この男性は罹患時近医を受診し、血液検査が行われていたので、残りの血清を回収し検査したところ、PCRとウイルス分離の両方でデングウイルス4型が同定された。しかし、その他の患者の発生はなかった。
デング4型ウイルスE遺伝子の分子生物学的解析では、1998年にインドネシアで分離されたウイルスと、2000年に東チモールで分離されたウイルスとに類似していた。
これまでクイーンズランド州の北部では、デング熱の国内感染事例が同一年に2件発生することすら異常であったが、2002年はそれぞれ異なった3件の国内感染事例を経験した初めての年となり、オーストラリア国内で初のデングウイルス4型による感染が確認された年でもあった。
(Australia CDI, 27, No.3, 384-389, 2003)